2013 Fiscal Year Annual Research Report
電流ゆらぎ測定を用いた微小接合系におけるスピンダイナミクスの解明
Project/Area Number |
25887037
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荒川 智紀 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00706757)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | ショット雑音 / 微小接合 / スピン依存伝導 / スピン流 / メゾスコピック系 / 非平衡 |
Research Abstract |
本研究の目的は、申請者が独自に開発した高精度電流ゆらぎ測定系を用いて、サブミクロンスケールの微小接合におけるスピン依存伝導過程の詳細を明らかにすることである。ここで、スピン依存伝導過程とは伝導電子の電荷だけでなく、そのスピンも伝導において重要な役割を果たすものを指す。 一般に、電流ゆらぎから伝導のダイナミクスを調べるためには、熱による擾乱を避けるために低温環境下で実験を行う必要がある。そこでまず、電流ゆらぎ測定の生命線である低温増幅器の開発を行い、測定系の性能を半導体二次元電子系に作製した微小伝導体(量子ポイントコンタクト)の非平衡電流ゆらぎを測定することで評価した[T. Arakawa et al., APL 103, 172104 (2013).]。その結果、世界有数の高精度、世界最低温の電子温度(20 mK)での非平衡電流ゆらぎ測定を実現した。 非平衡電流ゆらぎの代表的なものとしてショット雑音がある。通常のショット雑音は試料に電流を印加した際に生じる電荷の離散性に起因する電流ゆらぎである。一方で、電子は離散的なスピンの自由度も持っており、これに起因するスピンショット雑音が存在する。本研究では強磁性体/非磁性体接合からなる非局所スピンバルブ素子を用いてスピンショット雑音を実験的に初めて観測し、通常のショット雑音との関連性を明らかにした[T. Arakawa et al., in submitted.]。スピンショット雑音は今後のスピン依存伝導現象に対する新たなプローブとして発展する可能性を秘めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
世界有数の高精度、世界最低温の電子温度(20 mK)を有する非平衡電流ゆらぎ測定系の構築に成功した。 スピンショット雑音の検出に成功した。さらに、測定されたスピンショット雑音はLandauer-Buttikerの定式化に基づいて定量的に説明できることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
スピンショット雑音を検出するためには、スピン蓄積という特殊な非平衡状態を用いる必要がある。これまでは非磁性体中に強磁性体中からスピン偏局電流を注入することでこの非平衡状態を生成したが、本実験からこの方法では電子温度が上昇してしまうことが明らかになった。そこで、今後はスピンホール効果などを用いた新たなスピンショット雑音の検出方法を模索する。 また、強磁性体/超伝導体の微小接合を作製し、超伝導体へスピン注入過程の解明を目指した研究に着手する。
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