2013 Fiscal Year Annual Research Report
オーロラ爆発の解明に向けた電離圏駆動理論と観測データ解析の融合研究
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25887050
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
平木 康隆 国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (80514843)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | オーロラ / アルヴェン波 / オーロラ渦列 / 電離圏アルヴェン共鳴 / ハイブリッドアルヴェン共鳴 / 磁気圏-電離圏結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、オーロラ帯の磁気flux tube全体をダイナミックに伝播するシアアルヴェン波の非線形発展を厳密に追跡するシミュレーションコードを開発した。磁気圏部分には簡略化磁気流体モデルを用いた。一方、電離圏部分は、その厚みがアルヴェン波の波長より十分短いことから一層で近似し、二流体方程式を用いた。オーロラアークの発展を十分追跡できる水平スケール(70 km四方)をとり、磁力線方向は電離圏から磁気赤道までをとる3次元座標系を設定した。 (I) 初期条件としてアーク状構造のポテンシャルを与えた場合の非線形シミュレーション: 臨界値(~25 mV/m)を超えたとき、シアアルヴェン波が対流駆動型不安定性を起こし、その非線形発展の中で、オーロラ渦列が自然に形成することを証明した。オーロラアークがすぐに極側へ伝播しつつ、スプリットする様子が見られた。下向き電流の部分で渦列が形成し、2つのアークが変形して渦列に取り込まれた。最終的に、渦列は極側に拡大し、その先端部における電流値は、観測に匹敵する1-10 μA/m2にまで発達した。 (II) 磁力線方向のアルヴェン速度の電離圏・磁気圏キャビティを考慮した非線形シミュレーション:短波長のシアアルヴェン波が電離圏キャビティ領域(高度6千-1万km)に捕捉されること、また、その波のエネルギーが磁気赤道側に透過し、強い流れ場の二次的不安定性を起こすことを証明した。電離圏アルヴェン共鳴モードが励起し、アークが細かい構造にスプリットする様子が見られた。磁気赤道側に波の一部が伝わり、同様の構造を作った。やがてハイブリッドアルヴェン共鳴モードが励起した。流れのシアがある臨界値(背景の対流速度)を超えたとき、磁気赤道で二次的不安定による渦構造が形成した。この流れ場揺動の値は、200 km/sに達した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を行う過程において、詰めるべき新たな課題がいくつか出てきたが、当初計画した通り、(I) オーロラの渦列構造の再現、(II) ハイブリッドアルヴェン共鳴モードの働きに関する二編の論文を出版できたので、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、オーロラ爆発現象を理解していく上で基盤となる「シアアルヴェン波の非線形発展」を記述するシミュレーションコードは開発できた。今後の研究で詰めるべき課題として、 (I) オーロラの粒子加速を引き起こす慣性アルヴェン波の励起過程に関するシミュレーション (II) アルヴェン-磁気音波、バルーニングモード結合のシミュレーション (III) 磁気圏-電離圏結合、オーロラと沿磁力線電流との関係についての理論的解析 を行っていく必要があると考えている。 これらの課題への対応策として、(I)と(II)ではさらなるシミュレーションコード改良を行う。(I)では、電離圏キャビティ領域での電子慣性効果を取り入れたモデル改良をする。さらに、慣性アルヴェン波による電子の加速の様子をみるためのモンテカルロテスト粒子コードの開発である。これを基に、電離圏での「オーロラ粒子による電離度」をデータベース化する。(II)では、磁気音波を扱うため、方程式二つ(電子の圧力方程式とイオンの平行方向の運動方程式)を新たに用意する。バルーニングモードを扱うために、磁気赤道付近での磁場の引き伸し効果を考慮した座標系を設定してシミュレーションを行う。
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Research Products
(12 results)