2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25887056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
安藤 紘基 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 宇宙航空プロジェクト研究員 (00706335)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 金星大気 / 電波掩蔽 / Venus Express / 熱潮汐波 |
Research Abstract |
平成25年度は、当初の計画通り欧州の金星探査機Venus Expressの電波掩蔽データの解析手法の改良に集中した。電波掩蔽法は惑星大気の高度方向の温度分布を測定するのに有用であり、とりわけ金星大気では大気全体の運動やエネルギーバランスを理解するのに重要な要素である。しかし従来の解析手法では金星雲層より上の大気の温度を知るのが限界であり、雲層の下の温度分布は十分な観測がこれまでなされてこなかった。そこで今までの解析過程を見直して独自のアルゴリズムを開発する事により、過去の金星探査では観測できなかった金星雲層より下の温度構造を、高精度・高分解能で把握することに成功した。これにより、金星大気力学における最大の謎「スーパーローテーション」の駆動メカニズムとして最有力と言われてきた熱潮汐波の鉛直構造を捉えるための足掛かりを構築し、現在は熱潮汐波を検出するためのプログラムを開発中である。また金星雲層より下における高度方向の温度分布は、Venus Expressの光学機器観測のデータや地上観測のデータと照らし合わせることで、雲層以下の大気の構造を立体的に把握するのに役立つ。昨年度は国内や海外の研究者チームとどのようにデータを組み合わせて大気構造を3次元的に理解するか綿密な話し合いを行い、その土台を固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析過程を見直す事で新しく得られた温度分布は、過去の金星探査ミッションでは得る事が出来なかった高精度・高分解能のもので、熱潮汐波の検出だけでなく金星雲層より下の大気の状態を詳しく知ることも可能である。熱潮汐波の検出は金星大気の力学の進展に繋がるが、金星雲層より下の大気の温度構造は大気の熱環境に直接関わるものであるため、金星の環境学という観点から貴重なデータである。さらに地上観測やVenus Expressの光学機器観測のデータを使うことで、雲層以下の大気構造の把握にも繋がる。従って当初の予想を上回る科学的知見を得られると期待し、上記の自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
熱潮汐波の鉛直構造を捉え、波によって鉛直輸送される角運動量を定量する。そして波動の線形論から加速率を計算し、熱潮汐波が金星のスーパーローテーションにどれだけ効くのか定量的に議論する。 また、Venus Expressに搭載されている光学機器のデータや地上観測のデータと照らし合わせ、金星雲層より下の大気の3次元構造を捉える。さらに、サンプルの数は少ないがPioneer Venusミッションにおいて計測された雲層以下の大気の温度と比較して、過去と現在でどれほど金星大気の温度が変化したか定量し、金星の熱環境についても議論する。
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Research Products
(6 results)