2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25888002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押切 友也 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (60704567)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | アンモニア / 局在表面プラズモン / 光触媒 / 人工光合成 / チタン酸ストロンチウム |
Research Abstract |
本研究では、プラズモニック光電気化学触媒を用いた窒素の固定化を行い、アンモニアの光電気化学合成に関する研究を推進した。現行の膨大なエネルギー消費を要する熱化学的合成法とは異なるアプローチとして、太陽光を利用する合成法について模索した。 平成25年度は、ニオブをドープしたチタン酸ストロンチウム単結晶基板を半導体光触媒として用い、金ナノ粒子の担持により局在表面プラズモン共鳴による光捕集効果を付与し、さらに助触媒としてルテニウムを用いたプラズモニック光電気化学触媒の作成を行った。この触媒を酸化槽と還元槽を分断するように配置し、酸化槽に犠牲ドナーとしてのエタノールを含む塩基性の水を、還元槽に酸性雰囲気化水蒸気を含む窒素を封入することで、波長550nm以上の可視光照射下での常圧でのアンモニアの合成に成功した。また、アンモニア生成に関する見た目の量子収率は金ナノ粒子のプラズモン共鳴スペクトルと良い一致を示し、本反応にプラズモン誘起による電荷分離が寄与していることが分かった。 さらに、酸化槽ではエタノールの酸化物であるアセトアルデヒドに加えて酸素が効率的に発生していることが確認された。このことは局在表面プラズモンによって生成した複数のホールが金・チタン酸ストロンチウム界面のホットサイト付近にトラップされ、水の多電子酸化が効率的に進行している可能性を示唆している。 本成果は特許出願済みであり、また現在、論文を投稿中である。 平成26年度は、触媒設計および反応セル構造の最適化を行い、より高効率なアンモニア合成系の構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の実験計画は主に、1.プラズモニック光電気化学触媒の作製、2.可視・近赤外光照射によるアンモニアの生成、3.助触媒のアンモニア光電気化学合成への寄与の解明、であった。 このうち、1.に関してはニオブをドープしたチタン酸ストロンチウム単結晶基板を半導体光触媒として用い、金ナノ粒子の担持により局在表面プラズモン共鳴による光捕集効果を付与し、さらに助触媒としてルテニウムを用いたプラズモニック光電気化学触媒の作成を行った。2.に関して、この触媒を酸化槽と還元槽を分断するように配置し、酸化槽に犠牲ドナーとしてのエタノールを含む塩基性の水を、還元槽に酸性雰囲気化水蒸気を含む窒素を封入することで、波長550nm以上の可視光照射下での常圧でのアンモニアの合成に成功した。また、アンモニア生成に関する見た目の量子収率は金ナノ粒子のプラズモン共鳴スペクトルと良い一致を示し、本反応にプラズモン誘起による電荷分離が寄与していることが分かった。3.に関して、上記に挙げたルテニウム以外に、モリブデンを助触媒として試したが、ルテニウムの方が化学的安定性に優れ、より長期にわたって触媒活性を維持することが可能であることがわかった。 以上のことから、1.に関しては計画通り、2.に関しては詳細な反応機構が明らかになりつつあることから計画以上、3.に関しては限定的ではあるが計画に沿った成果が得られてたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究推進計画は以下の通りである。 1.半導体の物理的性質のアンモニア光電気化学合成への寄与の解明:半導体光触媒の触媒能は、対象物質の酸化還元電位と、半導体の価電子帯上端と伝導帯下端との関係に強く影響される。価電子帯と伝導帯のバンドギャップの間に窒素の還元電位と水の酸化電位を含む半導体としてはこれまでに検討したチタン酸ストロンチウムに加え、酸化チタン、窒化ガリウムなどが挙げられる。特に窒素の還元反応は熱力学的な安定性だけでなく強固な3重結合を切断する活性化エネルギーの寄与が重要であると推定される。半導体の価電子帯、伝導帯、バンドギャップとの相対関係やその表面構造が反応収率や反応速度、生成物の選択性に与える影響について明らかにする。 2.反応環境のアンモニア光電気化学合成への寄与の定量的解析:プラズモニック光電気化学触媒の反応は触媒表面での反応であり、主反応物や触媒以外の反応条件に強く影響されると考えられる。特に、電気化学的平衡にはpH及び温度が顕著に影響することがわかっており、アンモニア合成反応のpH、温度依存性を定量的に解析することにより、電気化学平衡の化学量論的評価が可能となる。反応に寄与する電子数やプロトン数など、詳細な反応機構を明らかにする。 3.より高効率なプラズモン誘起アンモニア合成セルの作製:1、2の成果を踏まえ、より高効率なアンモニア合成能を有する反応系を構築する。例えばハニカム構造等を有する多孔質基材の空孔内に半導体光触媒薄膜を成膜し、その上に金属ナノ構造、助触媒を担持する。残存する空孔にイオン交換膜を充填することで陽極反応で生成したプロトンを陰極へ輸送し、反応を継続的に進行させる。半導体薄膜形成には原子層堆積法やゾルゲル法などを用いる。
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Research Products
(4 results)