2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子による増強電場を利用した振動分光の高感度化
Project/Area Number |
25888004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
江口 美陽 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10520778)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 表面増強ラマン散乱 / 金ナノ粒子 / 金薄膜 / ギャップモード / 振動共鳴和周波光 |
Research Abstract |
金薄膜ー金ナノ粒子のギャップモードによる表面増強ラマン散乱の観察を行った。プローブにはメチルベンゼンチオールを使用した。測定サンプルとして、1.ガラスに金薄膜を蒸着させたもの(以下金薄膜)2.金薄膜にメチルベンゼンチオールを自己組織化させたもの 3.金薄膜に金ナノ粒子をキャストしたもの 4.金薄膜にベンゼンチオールの自己組織化膜を形成させた上に金ナノ粒子をキャストしたもの、の4種類を作製した。特に2と4を比較することでギャップモード形成によるラマン散乱強度への影響を考察した。1、3を観察することで、2、4で検出されたピークがメチルベンゼンチオールにによるものであることを確認した。合成した金ナノ粒子の消失スペクトルは520nm付近に極大を有していたが、基板にキャストすることで700nm以上まで長波長シフトを示した。これは金ナノ粒子同士が基板上で近接していることや金ナノ粒子が金薄膜と相互作用していることを示唆している。この測定結果からラマン散乱の測定は647nmの励起波長を使用することとした。この結果、4は2に比べ10の10乗オーダーの増強を示すことを確認した。 さらに、振動共鳴和周波光の観察を行った。励起光には、可視光647nmと赤外光2800cm-1の和周波を利用した。この結果、4は2に比べて5倍の増強度を示すことを確認すすことができた。以上のようなギャップモードによる振動共鳴和周波光増強はこれまでに発表されておらず、今後より詳細な研究を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金薄膜と金ナノ粒子によるギャップモードにおける表面増強ラマン散乱を確認した試料について、振動共鳴和周波光の増強を明らかにすることに成功した。この増強効果はこれまでに報告された例がないものである。増強度は5倍であり、分光技術の発展に大きく影響を与えうる重要な結果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
観察された、振動共鳴和周波光の増強度は5倍であったが、理論的には表面増強ラマン散乱の増強度と同程度の増強度(10の10乗オーダー)が得られるはずである。増強度が低く観察されたのは、金ナノ粒子同士の会合数にばらつきが存在すること、または金ナノ粒子と金薄膜の距離にばらつきがあることなどによる、コヒーレンス性の低下であると予想している。金ナノ粒子の保護膜をより効果的なものにするなどの工夫により、ナノ粒子同士の会合が起こりにくい条件を見いだし、振動共鳴和周波光の増強度を理論的な値と近くすることを目指す。
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