2013 Fiscal Year Annual Research Report
アミドの触媒的酸化、不斉ホウ素化による光学活性αアミノボロン酸の直接合成法の開発
Project/Area Number |
25888014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川守田 創一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00708472)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 不斉ホウ素化 / ロジウム触媒 / α-アミノボロン酸 |
Research Abstract |
本研究では、不斉金属触媒を用いたアルキルアミドを基質とするα-アミノボロン酸の立体選択的合成法の確立を目指している。本反応は、α-アミノボロン酸を立体選択的に直接合成できる点で魅力的である。α-アミノボロン酸はα-アミノ酸の類縁体と見なす事が出来、プロテアソーム阻害活性を有する化合物群として、ホウ素化合物として初めて医薬品(ボルテゾミブ)として市販化に至っている。したがって今後、創薬化学においてこのような部分骨格を有する類縁体の需要が高まることが考えられ、光学的に純粋なこれら誘導体の直接的な合成法の確立が求められる。 本手法はアルキルアミドを酸化的な触媒反応でイミン中間体を系中で発生させ、続けてヒドロホウ素の不斉付加によって立体的選択的にα-アミノボロン酸の合成を目指している。特に、官能基許容性に優れるホウ素試薬を用いるため、多官能性の複雑な分子への適用を最終目標として、温和な反応条件の達成を目指している。 本年度では、2つの触媒反応によって構成される本計画のうち、最初のステップになる金属触媒によるアミドの酸化的イミン形成反応の反応条件の検討を行った。酸化反応を触媒する金属としてRuやCuを用い、種々の酸化剤を検討することで温和な反応条件を目指した。現在のところ、効率良くこれらの反応が進行する条件の発見には至っていない。 反応基質はα位に水素原子を有するアルキルアミドを基準となる反応基質としたが、エステルやエーテルなどの基質も原理的に同様の反応性を示す可能性があるため、予備的な実験として検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はアルキルアミド類を基質として、触媒的に直接α-アミノボロン酸誘導体を立体選択的に合成する手法の確立を目指している。特に、本計画では複雑な分子の合成後期に適用可能な汎用性の高い変換を指向しており、多官能性の化合物に対しても化学選択的に狙った位置へホウ素を導入出来る汎用性の高い変換を達成したい。 本反応は、2つの金属による2つの触媒反応からなり、基質であるアルキルアミドの酸化的にイミン形成と、続く触媒的不斉ヒドロホウ素化によってα位にホウ素が置換したアルキルアミドの合成を目指す。 本年度ではまず、最初のステップであるアルキルアミドの触媒的酸化の検討を行った。アミンやアミドの酸化反応は村橋、直田等によってRu触媒を用いた例が(Chem. Rev., 1998, 98, 2599)、またLi等によってCu触媒を用いた手法が報告されている (Acc. Chem. Res. 2009, 42, 335)。これらの条件を参考にしつつ、種々の金属触媒と酸化剤の組み合わせを検討することで、基準としているアルキルアミドのイミン形成反応の進行を試みている。現在のところ、高収率かつ高選択的に目的の反応が進行する条件が定まっていない。 本年度では、イミンのヒドロホウ素化についても予備的な検討を行っている。本計画における2段階目のステップである、イミンへのヒドロホウ素の不斉付加は、本計画の申請時には達成されておらず、この2段階目の反応自身に新規性があった。予備的知見を得るため一般的なイミン化合物を用いて、ロジウム触媒による立体選択的なヒドロホウ素化反応の検討を行った。現在のところ、効率的かつ高い立体選択性を達成する条件の発見には至っていない。このような検討を行っている途中、Morken等がPd触媒によるイミンの触媒的不斉ホウ素化を達成した(JACS, 2013, 135, 9252)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、引き続き触媒反応の条件を精査して行くことを予定している。最初の段階である触媒的アルキルアミドの酸化は酸化剤として空気中の酸素を利用できる条件をできるだけ探して行く。また、2段階目の反応である立体選択的ヒドロホウ素化の反応条件、触媒系の検討を行って行く。 一方、Morken等のグループがPd触媒によるイミンの触媒的不斉ホウ素化を既に達成している。ホウ素試薬を用いた合成反応の開発競争は激しく、イミンの立体的ホウ素化については先に達成され、この反応に関して新規性を失ったことを意味する。本計画が目的とする変換反応においても、計画を達成しても当初想定していたインパクトは得られないと考える。 そこで、本計画の触媒反応の条件を精査することと並行してホウ素試薬を用いた別のタイプの変換反応も同時に展開していく計画である。反応としては、研究担当者が過去の研究にて開発したイリジウム触媒によるC–H結合のホウ素化反応を、発光性や電気伝導性などを有する機能性分子の直接変換反応に適用することを計画している。この触媒的C–H直接ホウ素化は高い官能基許容性が期待でき、本計画が達成を目指す「複雑な分子の合成後期に適用可能なホウ素化反応」という目標と合致すると考える。
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