2013 Fiscal Year Annual Research Report
相反定理に基づくグリーン関数と観測記録を駆使した高精度地震動予測手法の構築
Project/Area Number |
25889032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平井 敬 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00708373)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 地震動予測 / 地盤構造モデル / 波形合成法 / 相反定理 / 有限差分法 |
Research Abstract |
平成25年度は、2年間の研究の基礎となる、相反定理に基づいて計算したグリーン関数の比(伝達関数)を用いて地震動観測記録を補正することの妥当性を確認した。この検討は、中小地震による地震動観測記録が得られている地点に限定して行った。また、中小地震の記録を補正しながら壇自身の震源モデルを用いて波形合成を行い、その結果について検証を行った。 まず、伝達関数による地震動観測記録の補正の妥当性を検証するにあたって、名古屋市を中心とする中京圏を採用した。この地域に関しては、堀川ら (2008) のモデルを改良した詳細な地盤構造モデルが作成されており、3次元有限差分法による理論地震動の計算を高精度で行うことができた。震源としては2004年9月8日に三重県南東沖で発生したふたつの地震を対象とし、一方による地震動記録と伝達関数を掛け合わせることによって、他方の地震動記録をおおむね模擬することに成功した。 次に、伝達関数による補正を行った地震動を用いた波形合成法については、濃尾平野近傍の大地震として、東南海地震を材料に妥当性の検討を行った。これには、中小地震による地震動記録を伝達関数を用いて補正する本手法による合成波形と、従来の経験的グリーン関数法による合成波形とを比較した。結果、従来のグリーン関数法による合成波形と比較して、特に表面波の距離減衰について、明らかな違いが生ずることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は平成25年度から平成26年度までの2ヶ年にわたるものである。平成25年度は、中小地震による地震動観測記録が存在する地点について、本研究の基礎となる伝達関数を用いた地震動の補正方法について、その妥当性について検討を行い、さらに波形合成法に適用することを試みる計画であった。平成26年度は、伝達関数を用いた地震動の補正方法を、中小地震による地震動観測記録が存在しない地点にも拡張することを考える。 平成25年度の達成度としては、まず、3次元有限差分法の計算を行うコンピュータプログラムの作成を行った。これについては、当初は応用地質株式会社の林宏一博士によるプログラムを譲り受け、一部改変の上で使用する計画であった。しかしながら、差分格子の生成法や計算速度、および動作安定性の面で本研究課題の遂行に用いるにはやや難点があったことから、新たなプログラムを自作したものである。その上で、中小地震による地震動観測記録を、3次元有限差分法とグリーン関数の相反定理を利用して計算した伝達関数によって補正することの妥当性を確認した。また、従来の経験的グリーン関数法による波形合成結果との比較を行った。当初予定にはなかったプログラムの作成を行ったことにより少し時間を消費したが、研究計画からの大幅な遅れはなく、現在のところ研究の遂行にあたって大きな障害は発生していない。 以上より、現在までの達成度として、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度において、本研究課題の骨子となる伝達関数を利用した地震動記録の補正方法と、それを利用した波形合成法の可能性について検討を行った。 平成26年度には、平成25年度の成果をより盤石なものとしつつ、さらに任意の地点で地震動を予測する手法を構築することを試みる。また、相反定理を利用して計算したグリーン関数をデータベース化しておくことで、あらゆる地震に対して高精度・高効率な地震動予測が可能となることを、モデルケースを作成して示す。 平成25年度の成果をより盤石なものとするには、現行では伝達関数を作用させる際に単純な理論通りの計算方法を用いているが、3次元有限差分法によって計算されたグリーン関数の性状によっては、補正された波形に乱れが生じることがある。これについて、一部分に従来の経験的グリーン関数法で用いられている補正法を取り入れるなどして、改善を図る。 任意地点での地震動予測については、地震動記録を2段階で補正する必要があるため、制度の低下が予想される。この場合は、補正が有効となる震源間・観測点間の距離の目安を明らかにすることを目標とする。 グリーン関数のデータベース化については、名古屋市に位置する名古屋大学東山キャパスにおいて構築する。これは、濃尾平野において詳細な地盤構造モデルが作成されていることと、当該地点で数多くの地震動記録が得られており、本研究で提案する高精度・高効率な地震動予測を実践するに当たり都合が良いためである。想定する地震としては、南海トラフの巨大地震を対象とし、強震動生成域の位置など、震源モデルの違いが地震動に与える影響について考察することを目標とする。
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