2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属ソース・ドレイン型ゲルマニウムスピンMOSFETの創製
Project/Area Number |
25889041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笠原 健司 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 特任助教 (00706864)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | スピントロニクス / ゲルマニウム / ショットキー接合 |
Research Abstract |
超高速かつ超低消費電力が期待されるGeスピンMOSFETの創製には,強磁性ソース・ドレイン電極を用いたGeチャネル中におけるスピン注入・伝導の検出が欠かせない.従来のFe/MgO/Ge電極を用いたGe中のスピン注入・伝導を示唆する4端子Hanle効果の観測は,このFe/MgO/Ge電極の低いスピン注入/検出効率ために100 K以下という極低温に留まっているのが現状である[Y. Zhou et al., Phys. Rev. B 84, 125323 (2011).].研究代表者は,これまでの金属チャネル(Cu)における実験で高いスピン注入/検出効率が報告されているCo2FeSi(CFS)を用いることで, Ge中へのスピン注入/検出効率の高効率化を図り,4端子非局所Hanle信号の観測温度の高温化を試みた. 研究代表者は,これまでに原子層レベルで急峻な界面を有するCFS/Ge(111)接合の作製に成功しており[K. Kasahara et al., J. Appl. Phys. 107, 09B105 (2010).],本研究ではこの高品質CFS/Ge(111)接合を電子線リソグラフィー法及びAr+イオンミリング法を用いてサブμmオーダーの微細な4端子デバイスに加工し,スピン注入・伝導の検出法として一般的な4端子非局所Hanle効果測定を行った.150 Kで得られた4端子非局所Hanle信号を一次元拡散モデルにより解析したところ,研究代表者のCFS/Ge(111)電極は,従来のFe/MgO/Ge電極よりも二桁近く高いスピン注入/検出効率(~0.12)を有していることがわかった.その結果,225 K以上でもGe中のスピン注入・伝導を示唆する4端子非局所Hanle信号を観測することに成功した.この成果は,GeスピンMOSFETの創製を飛躍的に推進させる成果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高品質界面を有するCo2FeSi/Ge接合をスピン注入・検出電極として用いることで,従来の強磁性電極よりも約二桁も高いGe中でのスピン注入/検出効率を実現し,その結果としてGe中のスピン注入・伝導の検出温度を飛躍的に向上させることに成功した.しかしながら,このGe中のスピン注入・伝導の検出未だ低温に留まっているのが現状である.更に,GeスピンMOSFETの実現に向けて克服しなければならないもう1つの課題は,金属/Ge接合型ソース・ドレイン電極を用いたMOSFET構造におけるOFFリークの抑制,即ち,0.45 eV以上の金属/p-Ge接合のショットキー障壁高さ(ΦBp)を取得であるが,研究代表者が現在までに取得できているΦBpは,ΦBp = ~0.18 eVであり,上述のOFFリークの抑制に必須となるΦBpに達していない.以上の2つの理由から,達成度は3とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は前期中に,申請者が保有しているbcc-FM/Ge接合の界面制御技術を応用レベルまで高度化し,室温でも十分にリーク電流が低いMOSFETを実現可能な高いショットキー障壁高さ(ΦBp ≧ 0.45 eV)の取得を目指す.『金属/極薄bcc-FM/Ge(111)』構造の作製し,高品質なbcc-FM/Ge(111)界面によるFLP抑制効果を維持したまま,「金属」層のΦmでΦBpの変調を試みる.極薄bcc-FM層には,昨年度,従来のFM電極より約二桁も高いスピン注入・検出効率を示したCo2FeSi(CFS)を用い,「金属」層には低Φmを持つ金属の中でも比較的蒸着し易いGdを用いた『Gd/CFS/Ge(111)』構造を作製し,高いスピン注入・検出効率とΦBpの両立を試みる.挿入した極薄CFS層の膜厚がΦBpに大きく影響すると予想されるため,極薄(膜厚 < 1.0 nm)且つ平坦(凹凸 < 0.1 nm)なCFS層の実現を目指す.申請者はこれまでに,別のbcc-FM材料であるFe3Siを用いて,高品質な界面を維持したまま極薄膜化(~1.5 nm)することに成功しており,Fe原子の一部をCoに置換しただけのCFSでも極薄膜化は比較的容易に達成されると予想される.この『Gd/極薄CFS/Ge(111)』構造を縦型伝導素子に加工し,I-V特性からΦBpを算出することで,ΦBp ≧ 0.45 eVという特性を得る.これにより室温でn-Ge MOSFET動作を実証可能な「金属ソース・ドレイン」構造が完成する.この「金属ソース・ドレイン」構造に現有の原子層堆積装置を用い高品質なゲートスタック構造を加え,スピンMOSFETを試作する.ゲート電圧によるドレイン電流の制御と,ソース・ドレイン電極の磁化配置に応じた不揮発メモリ動作を実証することでショットキー型GeスピンMOSFETが創製される.
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