2013 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電ドメインの運動性を制御した高温用非鉛圧電セラミックスの開発
Project/Area Number |
25889049
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 学 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (30706750)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 圧電セラミックス / 高温 / 強誘電ドメイン / コア-シェル構造 / 欠陥化学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、300 ℃以上の高温で駆動できる圧電アクチュエータの実現に向けて、高温での圧電性が高度に制御された新規圧電セラミックスを創製することである。初年度は鉄酸ビスマスを主成分として含む固溶体セラミックスに着目して研究を行った。まず、鉄酸ビスマスとチタン酸ビスマスカリウムの固溶体セラミックスを固相プロセスによって作製し、異種元素の添加が同セラミックスの結晶構造、焼結挙動および電気的な特性におよぼす効果について調査した。その結果、微量の酸化銅を添加することによって、焼結初期段階での収縮が促進され、さらに銅イオンが粒子内部の格子欠陥を補償してセラミックスの圧電特性が向上することがわかった。一方で酸化銅の添加は圧電性が消失する相転移温度にはあまり影響せず、酸化銅を添加した試料でも約430 ℃という高い相転移温度を示した。つづいて、鉄酸ビスマスとチタン酸バリウム系の固溶体について、その微細構造と電気的特性との関係について検討を行った。固相プロセスにおける焼結条件を最適化することで粒子の平均サイズが約0.5~3 μmの間で変化した一連のセラミックスの作製に成功した。また、これらの試料の電気的特性を評価したところ、粒子サイズが増大するにしたがって圧電特性が向上する傾向が見出された。以上の結果から、鉄酸ビスマスを端成分とする固溶体セラミックスの圧電特性を異種元素の添加や粒子径の変化によって制御できることが示され、新規高温用圧電セラミックスの創製に向けて重要な知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、固相プロセスによる鉄酸ビスマス-チタン酸ビスマスカリウム系の高密度セラミックスの作製に成功し、同セラミックスに関して、ドメイン壁の運動性に与える異種元素添加の効果を明らかにしている。さらに、鉄酸ビスマス-チタン酸バリウム系の固溶体についても調査を開始しており、今後の展開が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ソフトコア・ハードシェル構造の実現に主眼をおいて研究を進める。まず、単純系であるチタン酸バリウムについて、無添加のチタン酸バリウム成形体を高温・短時間の熱処理により70%程度まで収縮させ、これをアクセプタをドープしたチタン酸バリウム前駆体溶液に浸漬、焼結させることでコアシェル構造の作製を試みる。続いて上記の手法を高い相転移温度を有する鉄酸ビスマス-チタン酸ビスマスカリウム系あるいは鉄酸ビスマス-チタン酸バリウム系固溶体に適用し、高相転移温度とソフトコア-ハードシェル構造を兼ね備えた新規高温用圧電セラミックスの作製を目指す。
|