2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25889052
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
遊部 雅生 東海大学, 工学部, 教授 (60522000)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 位相感応増幅 / 光増幅器 / 周期分極反転 / 擬似位相整合 / ニオブ酸リチウム |
Research Abstract |
多値変調信号に対応可能な位相感応増幅器(PSA)を実現するために、複数波長において擬似位相整合条件を満たすマルチQPM構造を有するPPLNを用いて、多段の周波数混合を行うことにより、4値位相変調(QPSK)信号から搬送波位相に同期した信号を抽出る方法を提案した。100GHzごとに3つの擬似位相整合ピークを有するPPLN導波路を作製し、QPSK信号と局発光を入射すると、2つの光の周波数混合が多段に生じることにより複数のアイドラ光を発生することが可能になり、信号位相を4逓倍したアイドラ光を発生することが可能になった。このことによりQPSK信号の変調を相殺して信号の搬送波位相に同期した信号を得ることに成功した。上記のアイドラ光を半導体レーザに注入同期することにより、信号波位相に同期した2つの局発光を発生し、両者の和周波発生により信号の搬送波位相に同期した励起光を発生した。この励起光を用いて上記の多段の周波数混合により発生した位相共役光と入力信号光の非縮退パラメトリック増幅を行うことにより、PPLNを用いたPSAとして初めてQPSK信号の増幅を実現した。さらに上記のPSAの構成では信号位相の変化に対してπ/2ごとに利得のピークが得られるために、この特性を利用してQPSK信号の位相雑音の低減が可能であることを明らかにした。さらに非縮退パラメトリック増幅の際に入射する信号パワーを増大されることにより、利得飽和が生じるため、この効果を利用して強度雑音の低減が可能であることも明らかにした。さらに上記の多段の周波数混合の効率の定式化を行い、位相抽出感度向上のための指針を明らかにした。また上記の非縮退パラメトリック増幅による構成を発展させて、さらに多値度の高い16QAM信号をPSAで増幅できることを初めて実証し、その増幅時の信号品質の改善等の特性も明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づいてマルチQPM構造を有するPPLN素子中の多段周波数混合を用いたQPSK信号の搬送波位相抽出を試み、その原理確認に成功した。さらにその搬送波抽出の過程で発生した位相共役波と信号光をPPLNに入射して非縮退パラメトリック増幅を行うことにより初めてPPLNを用いたQPSKに対応するPSAを実現した。またこのPSAの利得の信号位相依存性を利用してQPSK信号の位相雑音の低減が可能であることを実証した。これらによりPSAによるQPSK信号の再生中継増幅の効果を実験的に検証することに成功した。さらに、パラメトリック増幅過程における利得飽和を利用することによりQPSK信号の強度雑音の低減が可能であることを実証した。これらの成果は応用物理学会で発表し,現在論文投稿中である。さらに上記のマルチQPM素子による搬送波位相抽出における各周波数混合過程の発生効率の定式化を行い、位相整合特性の最適化によって、位相抽出感度向上が可能であるとの理論的な見通しを得ることが出来た。多値信号を増幅する際の群速度分散の影響については、今季はその検討を十分に進めることは出来なかったため、今後の課題として引き続き検討を行う必要がある。しかし一方で上記の非縮退パラメトリック増幅構成をより発展させることにより、当初計画よりもさらに多値度の高い16QAM信号の増幅を初めて実証することに成功した。この結果、従来技術である高非線形光ファイバを用いた構成にくらべると3次の非線形効果による波形劣化や、副次的な意図しない波長変換による信号パワーの散逸がないために、高い線形性を保ちながらより多値度の高い信号の増幅にも適用可能であることを示すことに成功した。この結果はECOCのポストデッドラインセッション、および電子情報通信学会で発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
H25年度中の位相抽出感度向上に向けた検討により、QPSK信号の搬送波抽出においては位相整合ピークを数を3つから2つへ減らしても、搬送波位相抽出が可能であること、さらにピーク数を減らすことによって周波数混合の変換効率が改善でき、信号位相の4逓倍信号を得るための多重周波数混合においては、その効率かマルチQPM素子の効率の6乗に比例するために、わずかな素子の変換効率の改善でも多重周波数混合の変換効率が大幅に改善できる見通しを得たので、その方針に基づいてマルチQPM素子の作製を行い、位相抽出感度の向上を図る。光ファイバ伝送網にPSAを適用するにあたっては、この搬送波位相の抽出感度によって、PSAで中継増幅できる入力光パワーが決定してしまうので、可能なかぎりPSAの動作が可能なダイナミックレンジの拡大を図る。さらに励起光の位相を安定化する光PLL回路の見直しを行い、より低入力パワーでのインライン動作を目指す。さらに我々が提案、実証している多値信号に対応する非縮退パラメトリック増幅を用いるPSAでは波長の離れた信号光と位相共役波であるアイドラ光を入力するために、1波長の信号光だけを入射する縮退型のPSAに比べると群速度分散による位相変化の影響を強く受けると考えられる。そこで信号光、アイドラ光の両者が群速度分散による位相変化を受けた場合のPSAの動作に与える影響の理論的な検討を進めるとともに、実際に群速度分散を与えた場合のPSAの動作を実験的に検証する。さらに搬送波抽出の高感度化、分散耐力の評価、光PLLの安定度等の実験的な完成度を勘案して、PSAを用いた周回伝送実験の検討を行う。
|