2013 Fiscal Year Annual Research Report
“細胞接着”基材表面物性のin situ光制御による幹細胞分化の動的局所変換
Project/Area Number |
25889060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
有坂 慶紀 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (70590115)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 分化 / 光架橋性 / 高分子ブラシ表面 |
Research Abstract |
細胞培養基材表面の物理化学的特性や機械特性による間葉系幹細胞の分化誘起を試みる研究が現在盛んに行われているが、これらは静的に固定された性状および形状の基材が多く、生体内のような動的に変化する細胞周囲の環境とは異なる。そこで、本研究では、細胞を接着させたまま培養基材の表面特性を、動的変化させる光架橋性高分子ブラシ表面の構築を行う。運動性や柔軟性のある高分子ブラシ表面から、光照射による三次元的な化学架橋によって運動性が束縛された高分子ゲル表面へ誘導する。これにより、表面のヤング率や水に対する濡れ性を動的変化させ、それに伴うヒト骨髄由来間葉系幹細胞(hMSC)の形態および機能、分化誘起の制御を試みる。 表面開始リビングラジカル重合によって光架橋性高分子ブラシ表面を作製するために、連鎖移動剤を表面固定したシラン剤修飾ガラス基板を用いて、光架橋性のあるマレイミドモノマーおよび疎水性モノマー(主にメタクリル酸メチル)の共重合を行った。作製した光架橋性高分子ブラシ表面について、全反射フーリエ変換型赤外分光法およびX線光電子分光法を用いて表面組成の評価を行い、表面に共重合体が修飾されていることを確認した。また、水に対する静的接触を測定した結果、光架橋性高分子ブラシ表面は約75度であったが、光照射前後おける接触角に大きな差異を確認することはできなかった。これは、今回作製した表面が、高分子薄膜であったためと考える。しかし、紫外線照射前後における光架橋性基板表面上のhMSCを観察した結果、その形態が異なることが明らかになった。紫外線照射していない基板上のhMSCは、ランダムな方向に伸展したが、紫外線照射した基板上のhMSCは一方向に細長く伸展する傾向を示した。この結果は、紫外線照射によって誘起された表面構造の変化が、細胞挙動に大きな影響を与えていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における最も重要な基盤技術である光架橋性高分子ブラシ表面の作製に着手し、細胞挙動を変化させ得る基板の開発に成功した。モノマーの有機合成やポリマーの精密重合をはじめとし、幹細胞の培養など一連の実験が遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
光の照射時間検討により光架橋高分子ブラシ表面の硬さや高分子鎖運動性等の表面物性を変化させ、hMSCの分化挙動について評価する。また、局所的な光照射による表面パターン化によって、部分的な領域内における細胞分化の制御を目指す。
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