2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25889070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
奥田 覚 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター, 研究員 (80707836)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 組織形態形成 / 多細胞ダイナミクス / 粘性効果 / RNRモデル / 粗視化モデル / 計算力学 / バイオメカニクス / 発生生物 |
Research Abstract |
これまでの研究で開発したRNRモデルは,組織全体の変位速度が微小であることを仮定しており,その適用範囲は小規模な組織の形成過程に限られていた.そこでまず,ダイナミックな器官形成に対して,RNRモデルを応用するため,新たに,以下の研究を行った. (1) 組織局所の速度場を考慮したRNRモデルの開発 RNRモデルの支配方程式に対して,組織局所の速度場の効果を導入する.RNRモデルにおける頂点の支配方程式は,粘性支配の仮定に基づき,粘性項と外力項からなる力の釣り合い式で記述される.これまでのRNRモデルでは,この粘性項が個々の頂点間で独立した摩擦力であったため,局所の速度場を考慮できなかった.そこで本研究では,この粘性項を頂点間の相対摩擦力として修正し,局所の速度場の効果を導入した.次に,構築した支配方程式の実装を行った. (2) 細胞構成要素レベルの粘性効果の数理モデル化 多細胞からなる組織・器官は,細胞骨格や細胞間結合タンパク質によって結合された連続的な構造物であり,(1)で導入した組織局所の速度場は,細胞構成要素レベルの粘性効果に支配される.例えば,上皮組織の頂端面付近には,収縮性のアクチン細胞骨格が存在し,その骨格構造変化に依存して細胞の粘性も変化すると考えられる.そこで,細胞構成要素レベルの内部構造を考慮して,頂点間の相対摩擦係数をモデル化した.この際,頂点の数に依存したアーティファクトな影響を避けるため,細胞形状のみに依存した関数を用いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い,(1) 組織局所の速度場を考慮したRNRモデルの開発,および,(2) 細胞構成要素レベルの粘性効果の数理モデル化,を行った.その結果,次年度の計画に必要な数理モデルの開発に成功した.したがって,本研究の進捗状況は,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
眼杯形成は,自律的な器官形成,協調的な多細胞ダイナミクス,三次元的な構造形成の例として重要であるが,その力学的な機構については未知な点が多い.そこで,前年度に構築したRNRモデルを用いた数値シミュレーションを行い,眼杯形成における多細胞レベルの三次元的な力学場の解析を試みる.また,実験的に得られた細胞動態や力学場・生化学場の情報との比較により,予想された機構の妥当性を評価する.さらに,力学的なロバスト性の解析により,眼杯形成機構について,力学場・生化学場を統合した包括的な理解を試みる予定である.
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Research Products
(4 results)