2013 Fiscal Year Annual Research Report
海馬長期増強時におけるAMPA受容体数の一過性減少機構の解明
Project/Area Number |
25890009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 洋光 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30705447)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 神経科学 / 細胞生物学 / ライブイメージング / シナプス可塑性 / 海馬長期増強現象 / AMPA型グルタミン酸受容体 / 全反射顕微鏡 / シナプス形成 |
Research Abstract |
シナプス入力に応じて情報処理機能が変化するシナプス可塑性は、記憶・学習の重要な細胞基盤と考えられている。本研究は、シナプス可塑性の代表例である海馬の長期増強現象 (LTP: long-term potentiation) に注目し、どのようなサブユニット構成のAMPA型グルタミン酸受容体 (AMPA受容体) の数がどのような動態で一時的に減少するのかを明らかにすることを目的としている。 平成25年度では、LTPの初期相でAMPA受容体の減少動態と考えられるエンドサイトーシスがどのように関与するのかを検証した。エンドサイトーシスのLTP分子機構に関する先行研究は無かったため、網羅的にエンドサイトーシス関連分子を探索した。そして、Dynamin3をエンドサイトーシス関連分子として特定し、AMPA受容体サブユニットGluA2がDynamin3の変化と同期してエンドサイトーシスされるという結果を得た。本研究では、シナプス接着分子Neurexinを用いてガラス面上にシナプス後膜様構造を形成させ、その内外におけるAMPA受容体動態を全反射顕微鏡で高シグナルノイズ比で観察した。この独自の実験系で、SEP (super-ecliptic pHluorin) やRFP等の異なる蛍光タンパク質の特性、及び光退色する度合いを測定し、観察条件を最適化した。なお、この可視化実験手法は国内外から注目され、Nature Protocols誌にその最新手法を発表した。以上より、海馬長期増強時におけるAMPA受容体数の一過性減少機構の解明が進んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画項目は、①エンドサイトーシスが起こる場所とそれに関与する分子の特定、②エンドサイトーシスされるAMPA受容体のサブユニット構成の検証、③長期増強時におけるAMPA受容体の動態全体像の把握である。平成25年度では、主に研究計画①を実施した。LTPにおけるエンドサイトーシス関連分子の特定は前例がなく、その候補分子の検討はクラスリン依存、クラスリン非依存、ダイナミン依存、ダイナミン非依存といった多岐にわたるエンドサイトーシス関連分子から探索する必要があった。それらからDynamin3を関連分子として特定し、シナプス後膜におけるGluA2と同期した減少を観察できたことで、計画は順調に進展していると考えている。また、SEPを融合させたGluA1とpHTomatoを融合させたGluA2を共発現させ、LTPにおけるそれらの動態をマルチカラーイメージングするなど、すでに一部では研究計画②にも進んでいることからも、計画はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、予定通り上記の研究計画②、③を実施する。成熟した海馬神経細胞に発現するAMPA受容体は、主にGluA1/2ヘテロ四量体とGluA2/3ヘテロ四量体、また議論の余地はあるがGluA1ホモ四量体であると考えられている。研究計画②では、異なるサブユニットの共発現実験により、GluA1/2ヘテロ四量体やGluA2/3ヘテロ四量体が、LTP発現時に一時的に減少するのかを検討する。そして、どのサブユニット構成のAMPA受容体が減少するのかが明らかになれば、異なる実験系でも同様の結果が得られるかを検証する。具体的には、ホールセルパッチクランプ法を用いてシナプス後膜におけるAMPA受容体サブユニット構成変化を検討する。 研究計画③では、過去に研究代表者で得られた側方移動及びエキソサイトーシスに関する情報と、本研究より得られるエンドサイトーシスに関する情報を統合する。そして、LTP発現に際しての異なるサブユニット構成のAMPA受容体の動態全体像モデルを提唱する。先行研究との整合性を検証するため、必要によってはエキソサイトーシスあるいは側方移動をライブイメージングする。
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