2013 Fiscal Year Annual Research Report
好中球細胞外トラップに焦点を当てた新視点からのがん細胞制御の研究
Project/Area Number |
25890019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
鴨志田 剛 帝京大学, 医学部, 助手 (40707410)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | NETs / 好中球 / 細胞外DNA / MMP / がん浸潤 / TAM |
Research Abstract |
がんも炎症であり, 様々な免疫細胞がその組織に浸潤し, がん細胞との相互作用によって, がんの病態進行に影響を与えている. 本研究では, がん組織に浸潤した好中球が, がん細胞との相互作用により活性化され, 好中球細胞外トラップ (neutrophil extracellular traps; NETs) とよばれる新たな生体防御機構を利用することで, がん転移に影響を与えていることを解明することを目的に研究を行った. まず, 細菌を用いて, NETs の評価系の確立を試み, NETs を誘導, 解析, 定量する実験系の確立に成功した (投稿準備中). 確立した NETs の評価系を応用し, がん細胞と好中球の相互作用で NETs が誘導されるかを検討した. その結果, 一部のがん細胞の培養上清で, NETs の誘導が観察された. 次に, 好中球の存在下におけるがん細胞の浸潤能を評価したところ, NETs を誘導したがん細胞の浸潤能は好中球の存在下で有意に増強した. また, 実験系に NETs を分解する DNase I を添加することで, その浸潤能増強は抑制された. このことから, 腫瘍組織に浸潤した好中球が NETs 形成を介し, がんの浸潤・転移を促進する可能性が示唆された. さらに, 細胞外マトリックスタンパク質ラミニン-332 に単球の腫瘍関連マクロファージ (tumor-associated macrophage; TAM) への分化を促進し, タンパク分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ (MMP)-9 産生を亢進する機能があり, γ2 鎖のタンパク分解プロセシングによりその機能が調節されていることを明らかとし, 投稿論文の形で報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はまず, 細菌を用いて, 好中球細胞外トラップ (NETs) の評価系の確立を試みた. 好中球を, 緑膿菌と反応させ, 培養後, DAPI による核染色, 好中球エラスターゼやヒストン抗体による免疫染色を行い, NETs 形成を評価した. 緑膿菌で刺激することによって, 好中球の核の細胞外への放出が観察され, 好中球エラスターゼとヒストンが, 放出された DNA 上に局在し, NETs が形成された. この研究を通じて, NETs を誘導, 解析, 定量する実験系の確立に成功した (投稿準備中). 確立した NETs の評価系を用いて, がん細胞と好中球の相互作用で NETs が誘導されるかを検討した. その結果, 膀胱がん細胞株 EJ-1 の培養上清を用いることで NETs が誘導された. しかし, 胃がん細胞株 MKN1 では NETs は誘導されなかった. 次に, 好中球の存在下におけるがん細胞の浸潤能を in vitro 浸潤実験系で評価したところ, EJ-1 細胞の浸潤能は好中球の存在下で有意に増強した. しかし, MKN1 細胞ではこのような浸潤能上昇は認められなかった. また, 実験系に NETs を分解する DNase I を添加することで, 好中球による EJ-1 細胞の浸潤能増強は抑制された. このことから, EJ-1 細胞は NETs を利用することで高い浸潤能を示すことが示唆された. さらに, 細胞外マトリックスタンパク質ラミニン-332 に単球の腫瘍関連マクロファージ (TAM) への分化を促進し, マトリックスメタロプロテアーゼ (MMP)-9 産生を亢進する機能があり, γ2 鎖のタンパク分解プロセシングによりその機能が調節されていることを明らかとし, 投稿論文の形で報告した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は, 前年度に得られた研究結果を踏まえ, 好中球細胞外トラップ (NETs) を介した細胞間相互作用をメカニズムも含め解析を行う. ① がん細胞による NETs 誘導メカニズムの解析: 前年度に細菌を用いて新しく確立した NETs の評価系を応用し, 好中球の NETs 形成を評価したところ, 膀胱がん細胞株 EJ-1 の培養上清を用いることで NETs が誘導された. しかし, 胃がん細胞株である MKN1 などのがん細胞では NETs は誘導されなかった. そこで, 培養上清中に含まれる因子の違いに注目して, がん細胞による NETs 誘導をメカニズムも含め解析する. ② がん細胞の浸潤能上昇における新たな NETs の役割: これまでの研究結果から, EJ-1 細胞は NETs を利用することで高い浸潤能を示すことが示唆されている. さらに, この時タンパク分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ (MMPs) の産生も増強していた. そこで, NETs-MMPs を介したがん浸潤増強メカニズムを解析する. 具体的には, NETs 上での MMPs の局在を免疫染色を用い評価する. 浸潤能増強への効果は MMPs 阻害剤を用いた浸潤実験で評価する. ③ NETs による単球の腫瘍関連マクロファージ (TAM) への分化/活性化の解析: NETs により単球の TAM への分化や活性化が促進されるか解析する. EJ-1 で好中球の NETs を誘導した後, 単球を培養し, TAM への分化や活性化をサイトカイン産生, MMPs 産生, 細胞表面マーカーを解析することで評価する.
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Research Products
(3 results)