2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25890022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
竹本 愛 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 研究員 (20706494)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | がん転移 |
Research Abstract |
本研究では、in vivoスクリーニングで同定されたがん転移促進因子Merm1による転移制御機構を明らかにし、治療標的となり得る作用点を提案することを目的としている。25年度は、転移に関与する可能性があるMerm1のMTaseドメインの活性に着目し、Merm1ノックダウンで発現が上昇するp53コファクター、ZACIの発現制御についてエピジェネティック変化への関与を検討した(1)。また、Merm1の機能に関わる相互作用因子の同定と解析を行った(2)。 (1) Merm1のMTase活性とエピジェネティック制御 ChIP解析の結果、Merm1はZACI遺伝子領域に広く結合していたが、ノックダウンによってその領域のヒストンメチル化の顕著な変化は見られなかった。また、高転移性メラノーマ細胞に発現させたMerm1をタグで精製し、ヒストンに対するメチル化アッセイを行ったが活性は検出されなかった。一方、DNAメチル化阻害剤処理で変化が見られるZACIプロモーター上のCpG islandのメチル化についても調べたが解析を行ったが、Merm1ノックダウンで変化は検出されなかった。これらのことから、Merm1はヒストンに対するメチル化活性はなく、ZACIの発現制御においてエピジェネティック制御に直接関与しないと考えられる。 (2) Merm1相互作用因子の同定 Merm1によるがん転移促進のメカニズムへの手がかりを得るために、相互作用因子の同定を行った。相互作用因子の解析から、Merm1のタンパク質安定化に働いている因子、機能発現に関与する可能性がある因子群が同定された。現在、これらの因子の解析を進めている。 Merm1はメラノーマや乳管癌で悪性度に相関して発現が亢進している。Merm1のタンパク質レベルや機能を制御する相互作用因子との関係の解析は新規がん転移制御の理解につながる可能性があり重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、Merm1のMTaseドメインがエピジェネティックな制御に関与している可能性をまず下流の遺伝子ZACIについて検討した。しかし、Merm1がヒストンのメチル化やDNAメチル化に関与していることを示唆する結果は得られなかった。Merm1によるメチル化制御を示唆する結果ではないが、ほぼ計画通りに研究を遂行した。これと並行して、Merm1ががん転移促進にはたらく機能的制御機構に迫るため、相互作用因子の探索と同定を行い、いくつかの因子群を見出した。現在行っているこれらの因子の解析により、Merm1の機能的制御が明らかになる可能性がある。これについても、ほぼ計画通りに進んでおり、Merm1の機能や制御に関わる新規機構が明らかになりつつある。他に、悪性度の高いメラノーマ細胞におけるMerm1高発現の機構を明らかにするために、計画書通り、プロモーター解析を進めた。発現に重要なプロモーター領域の特定まではできたが、その配列にはまだ多くの転写因子結合モチーフが存在し、Merm1の制御に関与する転写因子を特定するには至っていない。いくつかの候補についてモチーフを欠損させたレポーターコンストラクトを作製している。これを用いたレポーターアッセイとノックダウン実験などにより、転写因子を明かにする。この研究計画については達成度としては半分程度である。 以上、総合してほぼ計画通りに実験を進め、ある程度期待した成果が得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究から、Merm1のMTase活性が下流遺伝子のエピジェネティックな発現制御に関与しているという結果は得られなかった。また、Merm1はin vitroでヒストンに対するメチル化活性を示さず、今のところMTaseドメインの標的がわかっていない。しかしながら本年度中に、Merm1が出芽酵母ホモログBud23の変異を相補する報告があった(Õunap K et al. PLoS One 2013)。Bud23はrRNAのメチル化を介し、rRNAプロセッシングとリボソーム生合成を制御することがわかっている (White J et al. MCB 2008)。したがって、Merm1が酵母ホモログ同様にrRNAをメチル化の標的としリボソーム制御に関与する可能性がある。実際、本研究において同定したMerm1相互作用因子群の中には、rRNA制御因子、リボソーム等が多く含まれていた。さらに、rRNA合成の場である核小体を単離してくるとMerm1が一部含まれていた。これらのことから、Merm1のMTaseドメインの役割については、rRNAに対する作用を検討するとともに、その機能ががん転移制御に関与するかについて着目して解析を進めることで、本研究目的に到達できる可能性があると考える。
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