2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25891003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中川 直 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30707013)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 蛋白質 / 細胞・組織 / 生体分子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、細胞分化に伴う基本転写因子の変化に対するユビキチン-プロテアソーム系によるタンパク質分解の関与を検証することを目的としている。この目的のために平成25年度には、1) 細胞分化に伴ってタンパク質量が変化する基本転写因子構成タンパク質を同定する、2) このうちユビキチン-プロテアソーム系によって分解されるタンパク質を同定する研究計画を立案し、研究を遂行した。 細胞分化に伴ってタンパク質量が変化する基本転写因子構成タンパク質の解析では、まず初めにマウス筋芽細胞C2C12の分化誘導法を確立した。C2C12の分化効率は細胞の由来によって異なることが知られているため、由来の異なる3種類のC2C12について分化効率を調べ、最も効率的に分化誘導することができた細胞を今後の実験で使用した。次に、分化過程のC2C12においてタンパク質量の変化が認められる基本転写因子構成タンパク質を解析したところ、増加するものが2種類、減少するものが2種類同定された。 このうち増加するタンパク質ではmRNA量の増加も認められたため、主に転写レベルで発現量が制御されていると考えられたが、減少するタンパク質ではmRNA量の有意な変化が見られなかったことから、タンパク質レベルでの制御が疑われた。実際、1種類のタンパク質に関しては、外来プロモーターで安定的に発現させたGPFタグ付きタンパク質においても分化に伴ってタンパク質量が減少することを見出した。 ユビキチン-プロテアソーム系によって分解される基本転写因子構成タンパク質の解析では、プロテアソーム阻害薬を用いた実験により、細胞分化過程でタンパク質量が減少する上記のタンパク質2種類が、細胞分化過程においてプロテアソームによって分解されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究目標であった1) 細胞分化に伴ってタンパク質量が変化する基本転写因子構成タンパク質の同定では、C2C12細胞の筋分化過程において増加するタンパク質を2種類、減少するタンパク質を2種類同定することができた。購入可能な抗体を用いて今回調べることができたのは基本転写因子構成タンパク質の約半数であったため、これらの他にもタンパク質量が変化する構成タンパク質がある可能性がある。これらのタンパク質に関しては、遺伝子をクローニングして外来的に発現させた細胞を作製し解析することが可能であるが、これらの遺伝子が比較的大きいものが多くクローニングに時間がかかることが予想されること、および候補タンパク質がすでに2種類存在することから、今回は解析しなかった。もう一つの目標であった2) ユビキチン-プロテアソーム系によって分解されるタンパク質の同定では、上記タンパク質2種類が、ともにプロテアソームによって分解されることを明らかにした。これらのことから、筋分化系においては、当初の計画通りに研究が進展していると考えられる。 しかし、平成25年度に行う予定であったマウス脂肪前駆細胞3T3-L1およびマウス多能性幹細胞 (ES細胞) の分化系の実験は、マウス筋芽細胞C2C12の効率的な分化誘導法の確立、マウス細胞で用いることのできる抗体とプライマーの選別、および反応条件の検討などで時間を取られてしまい、遂行することが出来なかった。これらのことを総合的に考慮して、本研究者は平成25年度の研究達成度をやや遅れていると判断した。 平成26年度においては、C2C12細胞を用いた実験と並行して、3T3-L1およびES細胞の分化系の確立を急ぐとともに、同様の試薬を用いて同様の実験を行い、異なる分化系においても同様の機構で基本転写因子の変化が制御されているか解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究の結果、2種類の基本転写因子構成タンパク質がC2C12の分化過程においてプロテアソームによって分解されることが明らかとなった。この結果に基づいて平成26年度においては、これらのタンパク質 (以下、当該タンパク質と表記) のプロテアソーム分解に必須なユビキチン付加酵素 (ユビキチンリガーゼ) を同定するとともに、これらのタンパク質の減少と筋分化の関係を明らかにする。また、同様の分子機構が他の分化系にも機能しているかを、マウス脂肪前駆細胞3T3-L1およびマウス多能性幹細胞 (ES細胞) の分化系を用いて調べる。 ユビキチンリガーゼの同定では、siRNAライブラリーを用いてユビキチンリガーゼを網羅的に発現抑制し、当該タンパク質の分化に伴う分解に必須なユビキチンリガーゼを単離する。その後、同定されたユビキチンリガーゼが実際に当該タンパク質をユビキチン化するか確認するため、ユビキチンリガーゼの発現抑制または過剰発現を行い、内存性の当該タンパク質のユビキチン化レベルの変化を調べる。同時に当該タンパク質の発現量も調べ、ユビキチン化レベルと逆相関することを確認する。 当該タンパク質の減少と筋分化との関係の解明では、細胞分化前に当該タンパク質を発現抑制または過剰発現し、細胞分化効率に対する影響を調べる。また、その際に発現変化が見られる遺伝子と、当該タンパク質を含む基本転写因子が結合している遺伝子の重複を調べ、当該タンパク質の減少と遺伝子発現変化の関係を解析する。当該タンパク質の結合遺伝子はクロマチン免疫沈降後、次世代シークエンサーを用いて同定する。また、遺伝子発現変化は、RNAシークエンス法により検出する。 これらと並行して、脂肪前駆細胞3T3-L1およびES細胞の分化系を確立し、C2C12の筋分化系で得られた結果が他の分化系でも同様に機能しているか調べる。
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