2013 Fiscal Year Annual Research Report
弱光環境下における光化学系Iサイクリック電子伝達の新たな生理学的役割
Project/Area Number |
25891005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
矢守 航 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 助教 (90638363)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 光合成 / 電子伝達 / サイクリック電子伝達 / リニア電子伝達 / NDH complex / CO2同化 / 弱光 / 変動光 |
Research Abstract |
自然界では、植物の受ける光環境は晴れ/曇りという天候の影響を直接受けるし、晴れの日であっても植物体の葉や茎の相互被陰によって一日を通して常に変動している。過剰な光の受容は活性酸素の生成を介し光合成装置に障害を与えるが、この光阻害を回避するために、光化学系I サイクリック電子伝達経路が重要な役割を果たすと提案され続けている。しかしながら、申請者のイネを用いた研究から、サイクリック電子伝達経路は強光ストレスよりも弱光環境下における電子伝達反応の最適化に重要な役割を果たす可能性が出てきた。そこで、本年度は、強光環境下と弱光環境下におけるNDH依存サイクリック電子伝達経路の役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 植物材料として、野生体イネ (Oryza sativa L. cv. Hitomebore)とNDH欠損変異体イネを用いた。植物を生育環境の制御が可能な人工気象室において、日長を12時間、相対湿度を60%、栽培温度を28/23℃(昼/夜)として、光強度を200 μmol photons m-2 s-1 (弱光)と800 μmol photons m-2 s-1 (強光)の2つの環境で栽培を行った。その結果、強光栽培時には、野生体と変異体の二種間で成長量に差は無かったが、弱光栽培時には、変異体が野生体よりも有意に成長量を減少させることが分かった。 サイクリック電子伝達経路は強光などの酸化ストレス環境で重要だと信じられてきており、これまでに弱光環境におけるサイクリック電子伝達経路の重要性を議論した研究例は無い。申請者のデータは、従来の通説とは異なり、サイクリック電子伝達経路が弱光下における光合成の最適化に重要な役割を果たすことを示唆した。これらの研究成果は光合成効率向上のための技術基盤作りに確実に貢献すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室を一からセットアップしなくてはいけずに、栽培装置や測定装置の準備が間に合わず、結果的に予定していた実験が思うように進まなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
栽培装置や測定装置の準備は着々と整ってきている。そこで、本年度の前半は、まず初年度に計画していた研究課題である「弱光環境下におけるNDH依存サイクリック電子伝達経路の役割」を明らかにする。本年度の後半に、人工気象器内で変動光環境を再現できるように、弱光と強光を繰り返す光環境の制御を行い、「変動光環境におけるNDH依存サイクリック電子伝達経路の役割」についても明らかにする。様々な環境における植物成長量の比較だけではなく、ガス交換解析によるCO2同化速度の測定を基本に、クロロフィル蛍光による光化学系II (PSII) 電子伝達速度の測定やP700吸光解析による光化学系I (PSI)の電子伝達速度の測定を行い、個葉レベルにおける光合成能力の評価を行う。
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Research Products
(8 results)