2013 Fiscal Year Annual Research Report
葉老化時おける葉緑体タンパク質分解メカニズムの解明
Project/Area Number |
25891018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上妻 馨梨 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70704899)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 葉老化 / 葉緑体 / タンパク質分解 / 光合成 / 光化学系II |
Research Abstract |
本研究の目的は植物の葉老化時に誘導されるシステマティックな葉緑体タンパク質の分解機構の解明である。特に、光化学系II (PSII) のマイナーサブユニットの変異体(thf1)およびATP合成酵素の変異体(gamera)が伴に暗黒老化時に高い光合成能力を保持することに着目し、両変異体を用いることで葉老化時のタンパク質分解メカニズムを目指した。イネのthf1は老化時に長期間緑色を保つステイグリーンの表現型を示すことから、昨年度はシロイヌナズナthf1変異体がステイグリーンの表現型を示すことを確認し、光合成活性の変化を測定することを試みた。しかしながら、シロイヌナズナのthf1はイネのようなステイグリーン表現型を示さず、光合成活性も低かった。 thf1が本研究の目的達成に適さないことが示唆されたため、PSII関連の他の変異体でステイグリーン表現型をもつダイズを用いて研究を進めていくことにした。PSIIのサブユニットであるPsbMが欠損したダイズのpsbmは暗黒老化時においてクロロフィルbが分解せず緑色を保つことが知られている。また同時にPSIIのアンテナタンパク質であるLHCIIが分解しないことも報告されている。そこで葉老化においてタンパク質分解に異常をきたしたpsbmのPSII複合体分解の時間経過を追い、分解途中のPSII複合体がどのような構成をとるのか視覚的に明らかにすることを目指した。その結果、PSIIの複合体の一部がPSIIコアから欠落することよりステイグリーン表現型を誘導していることが明らかなった。言い換えれば、PSII複合体の分解には複合体が会合していることが重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナのthf1がイネと大きく違う表現型を示したことから、当初計画していた変異体解析は断念せざるを得なくなった。しかしながら、研究目的は葉老化時におけるPSIIの分解メカニズムの解明であることから、別のPSII変異体を用いた研究に切り替えた。昨年度は変異体の基礎的な生理解析を行うことを計画に掲げていた。その計画通り、ダイズのPSII変異体psbmの通常生育条件下での光合成生理活性の測定、暗黒老化時の生理活性および光合成タンパク質の蓄積量解析をはじめ、クロロフィル量安定性の有無など基礎データを収集した。さらに、変異体のPSIIのアンテナタンパク質であるLHCIIが非常に安定であることから、PSIIの複合体解析も行った。その結果、変異体では老化時に5つのサブユニットの集合体が複合体から解離することが観察された。さらに変異体におけるクロロフィル分解酵素の活性が低下することも突き止めた。これらのことからクロロフィル分解酵素の働きと複合体形成に関連がある可能性が示唆された。昨年度は目標としていた変異体の生理解析と伴に分子メカニズム解明の足がかりとなるなる結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では「PSII老化分解開始シグナルの解明」を目指している昨年度の研究から葉老化時におけるタンパク質複合体の構成がクロロフィル分解酵素などの他の膜タンパク質とのインタラクトに関与していることが示唆された。今後はこのクロロフィル分解酵素の挙動を中心に、PSII複合体およびアンテナタンパク質の安定性に注目する。そのためにクロロフィルb分解酵素であるNYC1遺伝子のRNAi植物の解析も併せて行う。psbmの変異体はダイズの研究から始まったものであるが、ダイズは形質転換技術の実績が乏しいことから、今後の変異体を用いた解析はすべてタバコを用いて行うことにする。 まずはタバコのpsbmでもダイズと同じようにステイグリーンを示し、PSII複合体の分解の様子が酷似していることを確認する。さらに、上述したようにNYC1遺伝子のRNAi植物を用いて老化時におけるPSII複合体の構成を追跡することでクロロフィル分解に複合体形成が必須であるかどうかを検証する。 また、最終的な目標として葉老化時にPSIIを分解するプロテアーゼとの関わりも明らかにしていきたいことから、暗黒誘導されるプロテアーゼ様タンパク質をデータベースなどから収集し、本研究の暗黒条件下でそれらの遺伝子発現がどのように変化するか検証を試みる。 これらの試みから、PSII複合体形成と分解、ひいては老化時においてほとんど知られていないプロテアーゼの挙動を総合して葉緑体の老化分解メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(1 results)