2013 Fiscal Year Annual Research Report
造血組織における多様な発がん過程の網羅的シミュレーション解析
Project/Area Number |
25891019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
波江野 洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70706754)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 確率過程 / 造血器腫瘍 / 数理モデル |
Research Abstract |
造血幹細胞から末梢血球に至る分化過程の仕組みに関する数理モデルを構築した。健康な状態では、赤血球や白血球などの機能細胞は常に一定量供給され、消費されている。各細胞系譜について、細胞の分化段階に関するコンパートメントの数と、それぞれのコンパートメントに存在する細胞について、増殖率と分化率をパラメータとして与え、コンパートメントの数や、増殖率・分化率に関しては現在の知見や先行研究を参考に決定した。 造血組織全体の数理モデルを構築した後、各コンパートメントにおける増殖率や分化率が突然変異によって変化するという状況を確率シミュレーションで考えた。増殖率や分化率の変化量は、それぞれある確率分布に従うと仮定し、変化量に関する確率分布を与えた。発がんに必要な性質である自己複製能力は、分化率が小さくなることで達成でき、異常増殖能力は増殖率が高くなることで達成できる。このため、理論上は造血幹細胞でなくてもがんが発生する。今後、このシミュレーションによって、多様な造血器腫瘍の発がん過程を時間経過と共に再現することを目指す。 また、多様な造血器腫瘍と細胞数の変化に関する臨床データを文献から収集し、データベース化を行った。これによって、シミュレーションの結果と血液がんの対応付けを円滑に進める事が可能になる。今後、シミュレーションの結果から、それぞれの造血器腫瘍について、機能(増殖/分化)の面から見た新規遺伝子変異の予測と、治療の標的にすべき細胞の特定を目指す
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在研究の核となる確率シミュレーションを構築し、結果を得ている状況のため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている確率シミュレーションのデータから、各々の造血器腫瘍について、主要な突然変異獲得経路を同定する。これによって、シミュレーションの症状に対応づけられた造血器腫瘍が、どの分化段階で、どのような変異(増殖/分化)を獲得することによって発生するか明らかになる。シミュレーションの結果の妥当性を検討するために、慢性骨髄性白血病の発がん過程をうまく再現できているか確認する。
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