2013 Fiscal Year Annual Research Report
結晶環境のタンパク質構造への影響のシミュレーションとデータベースによる定量的解析
Project/Area Number |
25891031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮下 治 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 上級研究員 (10620528)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 計算機生物物理 / 計算機構造生物 / 結晶構造 / 分子動力学シミュレーション / データベース解析 |
Research Abstract |
この研究では,結晶環境がタンパク質の構造と運動にどう影響するかについてのより普遍的な知見を得るために,水溶液中での運動と結晶構造の整合性を,分子動力学シミュレーションとデータベース解析を組み合わせることにより系統的に調べる.さらに,結晶化条件がどの様に構造に影響するかについても調査する. 1. Cyanovirin-N残基側鎖の構造と運動への結晶環境の影響 ― Cyanovirin-Nの通常の水溶液中でのシミュレーションを行いアミノ酸残基側鎖の動的分布を得た上で,PDBに登録されているX線結晶解析で得られた構造と比較した.比較は,側鎖の構造をPenultimate Rotamer Libraryを用いて,表現することで行なった.さらに,結晶状態でのシミュレーションも行い,分布がどの様に変化するかを調べた. 結晶場の影響を評価するにあたり,構造への影響と運動への影響のそれぞれを考える必要がある.まず,最も多く分布するrotamer stateとX線結晶構造は比較的一致する.これは,結晶構造が分子の最安定構造をほぼ反映していることを示している,一方で,一致しない場合も多く見られ,それも結晶内相互作用がある残基だけにおこるとは限らないことを明らかにした.結晶状態のシミュレーションではより一致することから,これらの変化が結晶環境の影響であると考えられる.また,結晶場の運動への影響を,エントロピーを見積もることにより評価し,運動の影響は構造への影響の有る無しに関わらず起こることを示した. 2. BPTIのシミュレーションとPDBデータの構造分布の比較 ― BPTI (bovine pancreatic trypsin inhibitor) の分子動力学シミュレーションを行い, rotamer stateの分布を評価した.また,PDBに登録されているBPTIのデータベースの統計処理を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,Cyanovirin-Nについての結果について論文投稿を目指す.次に,研究実施計画に従って,BPTIについて解析を行ない,さらにその後,lysozymeなどで見られる大きな構造変化について研究を行なう.
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