2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗体によるウイルスの出芽阻害メカニズムに関する研究
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25892002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
梶原 将大 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 博士研究員 (70711894)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | フィロウイルス / エボラウイルス / マールブルグウイルス / 出芽 / 抗体 / 表面糖蛋白質 / エボラ出血熱 / マールブルグ熱 |
Research Abstract |
フィロウイルス (エボラウイルス (EBOV) およびマールブルグウイルス (MARV)) はヒトを含む霊長類に重篤な出血熱を引き起こす。一般的に、抗体によるウイルスの中和は、ウイルスの表面糖蛋白質に結合した抗体がウイルスの細胞侵入を阻害することによると考えられている。昨年度までの研究により、従来の中和活性を持たない抗体がMARVの出芽を著しく阻害することを報告した。本研究では抗体による出芽阻害のメカニズムおよび感染防御への寄与を明らかにし、フィロウイルス感染症に対する新たな予防・治療法の開発へとつながる知見を得ることを目指す。 MARV同様、EBOVに対する出芽阻害抗体の存在が予想された。そこで、Zaire EBOVの表面糖蛋白質GPを有するウイルス様粒子をマウスに免疫し、従来の融合法によりGP特異的抗体を産生するハイブリドーマ細胞を計136クローン樹立した。各細胞の培養上清を用いて、産生抗体のZaire EBOVに対する出芽阻害活性ならびに中和活性についてスクリーニングしたところ、それぞれ32および24クローンが陽性だった (抗体存在下において、出芽効率もしくは細胞侵入効率が半減したとき陽性とした)。また、いくつかの抗体は異なるフィロウイルス種のGPに対して交差反応を示した。来年度は、各抗体を精製し、出芽阻害活性および中和活性について解析をする。 出芽阻害抗体の感染防御免疫への寄与を明らかにする為にハムスターを用いた防御試験を計画した。EBOVと異なり、MARVにはハムスター馴化株が存在しない。そこで、本年度はハムスターを用いてMARVを継代し、MARVのハムスター馴化株を得た。来年度はMARVおよびEBOVのハムスター馴化株を用いて、出芽阻害抗体の受動免疫による防御試験を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、EBOVに対する出芽阻害活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞の樹立を示唆する成果が得られた。これまでの研究を通して、抗体によるMARVに対する出芽阻害現象は報告していたものの、同じくフィロウイルス科に属するEBOVにおいても同様の現象が存在するか否かは不明であった。本研究の目的は抗体による出芽阻害のメカニズムを解明するとともに、フィロウイルス感染症に対する新たな予防・治療法の開発へとつながる知見を得ることである。抗体による出芽阻害については、同じフィロウイルス科であっても、EBOVとMARVで異なるメカニズムを持つ可能性も考えられる。本年度の研究成果により、抗体による出芽阻害のメカニズムについてフィロウイルス全般を対象に研究する事が可能となった。 また、本年度の研究によりこれまで報告の無かったMARVのハムスター馴化株の樹立に成功した。抗体による出芽阻害のメカニズム解明を目指す研究と同様に、出芽阻害抗体の感染防御免疫への寄与についてもEBOVおよびMARVの両ウイルスを対象に実験する事が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、ハイブリドーマ細胞の培養上清を用いてEBOV GP特異的抗体の有する出芽阻害活性および従来の中和活性をスクリーニング的に評価した。来年度は、これら抗体を精製し、EBOVに対する各種活性を再評価する。なお、いくつかの抗体はZaire以外のEBOV種のGPにも反応性を示した。これらの抗体については種間交差性出芽阻害活性および中和活性を有するか否かを評価する。 また、これまでの研究から得られたMARVおよびEBOVに対する出芽阻害抗体の受動免疫による感染防御効果を、ハムスターおよびハムスター馴化フィロウイルスを用いた感染実験により評価する。具体的には、ウイルス接種前後に出芽阻害抗体によりハムスターを受動免疫し、臨床症状・体重の変遷を継時的に記録するとともに、ハムスターの各種臓器におけるウイルス増殖を調べる。 さらに、抗体による出芽阻害のメカニズム解明を目指す。現在、その仮説として、①抗体を介したGP分子の架橋による機械的な障害②抗体結合によるGPの出芽促進機能の阻害③抗体結合が誘導するシグナルによる出芽過程の停止、を予想している。これらの予想に従って、抗体存在下におけるウイルス様粒子の凝集の有無、各種欠損GPを用いたウイルス様粒子の出芽効率の解析などを実施する予定である。 また、MARVおよびEBOVに対する出芽阻害抗体のエピトープ領域と同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドをマウスに接種し、得られた血清の出芽阻害活性を解析する。ポリペプチドの免疫によって出芽阻害抗体が効率よく誘導されるようであれば、これらポリペプチドがフィロウイルス感染症の予防に応用可能か評価する。
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[Journal Article] Mapping of conserved and species-specific antibody epitopes on the Ebola virus nucleoprotein.2013
Author(s)
Changula K, Yoshida R, Noyori O, Marzi A, Miyamoto H, Ishijima M, Yokoyama A, Kajihara M, Feldmann H, Mweene AS, Takada A.
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Journal Title
Virus research
Volume: 176 (1-2)
Pages: 83-90
DOI
Peer Reviewed
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