2013 Fiscal Year Annual Research Report
多様な土地利用変化を考慮した温暖化シナリオによるコメ収量の影響評価
Project/Area Number |
25892004
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 龍平 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70701308)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 気候変動影響評価 / 農業気象 |
Research Abstract |
平成25年度は、温暖化シナリオのダウンスケールと土地利用変化による影響も加味した東北地方の温暖化による収量への影響評価を行った。 まず、気候変動に関する政府間パネルで使用されている2つの全球気候モデル(MIROC5、MRI-AGCM)の出力を1981-2000年と2081-2099年の6-8月において非静力学モデルJMA-NHMを用いて10kmグリッドで高解像度化し、39年間の1時間間隔温暖化シナリオを構築した。作成したシナリオは現在気候において観測値に対してバイアスがあったため、20年平均(1981-2000)での累積分布関数が観測値と作成したシナリオとの間で一致するようにバイアス補正を行った。バイアスが将来気候においても同一であると仮定して、同様の補正を将来気候のデータにも行った。 また、土地利用変化による気温への影響を考慮するため、西日本で得られた影響評価関数による土地利用変化に起因する気温変化の最大値と最小値を高解像度化した気候変化シナリオと合成し、温室効果気体に由来する温暖化による収量の変化と土地利用変化由来による環境変化を通した収量への影響を評価した。土地利用変化がないと仮定した場合、東日本は4度前後の昇温とCO2の施肥効果によって3割の増収が見込まれた(ただし、本研究で使用した2つのモデルのみの結果であることに注意が必要である)。土地利用変化による環境の変化は収量を変化させ、土地利用変化起源による収量の変動幅は温室効果気体による収量変化の約20%と見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の大きな課題であった気候変化シナリオのダウンスケールは、2つのモデルについて各39年分が完了し、シナリオの構築はバイアス補正も含めて終了している。土地利用変化による環境応答を見積もる際に使用する影響評価関数はプロトタイプの作成が終了している。したがって、総合的にはおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
影響評価関数がプロトタイプであるため、東北地方に適した形へとアップデートを行う。作成した影響評価関数と仮想的に構築した10,000通りの土地利用変化シナリオとを組み合わせ、平成25年度に作成した高解像度温暖化シナリオに「合成」して新しい温暖化シナリオを構築する。作成したシナリオを水稲生育モデルに入力して、品種ごとに温暖化によるコメ生育への影響評価を行う。得られた成果を温暖化時の東北地方における安定したコメ収量確保への適応策としてとりまとめ、国際誌に論文として公表する。
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