2013 Fiscal Year Annual Research Report
反芻家畜におけるUmami受容体を介した成長ホルモン分泌調節の解明
Project/Area Number |
25892027
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高橋 辰行 北里大学, 獣医学部, 助教 (80707852)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | ヒツジ / 味覚受容体 / 下垂体 / 成長ホルモン / アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究目的は反芻家畜であるヒツジにおいて、アミノ酸による成長ホルモン分泌促進がどのような機序で調節されているかを解明することであり、この調節因子として味覚受容体、特にUmami受容体(T1R1およびT1R3)の関与の可能性を検討した。反芻家畜においてT1R1およびT1R3受容体の各遺伝子配列情報が報告されているのは、ウシのみでありヒツジにおいては報告されていないため、初年度ではまずヒツジのT1R1およびT1R3の遺伝子配列を決定した。ヒツジのゲノム情報と報告されているウシのT1R1あるいはT1R3の遺伝子配列からヒツジのT1R1およびT1R3の遺伝子配列を予測し、予想配列に基づいてPCRを行った。その後、各遺伝子のクローニングを行い、遺伝子配列をそれぞれ決定し、種々の動物のT1R1およびT1R3の遺伝子配列との相同性を確認した結果、得られた産物はUmami受容体であることが確認された。また、T1R1およびT1R3のシグナル分子であるα-gustducinの遺伝子配列も決定した。さらに、ヒツジの下垂体前葉および後葉において、T1R1およびT1R3が発現しているかどうかをPCRおよび免疫組織化学法によって検討した。T1R1およびT1R3の遺伝子発現はマウス同様、ヒツジにおいても下垂体前葉および後葉で発現していたが、免疫染色では両抗体の免疫動物がヤギであったため二次抗体がコントロールでも反応してしまい明確な結果が得られなかった。そこで、ウシの下垂体組織を用いて検討したところ、弱い染まりではあったがT1R1およびT1R3の陽性細胞が観察され、成長ホルモン分泌細胞と思われる細胞において発現していた。今後両抗体の特異性および発現している細胞をより詳細に検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画よりも遅れている理由は、実験対象動物であるヒツジを研究開始すぐに確保することができなかったことにある。当大学の附属農場からヒツジを購入する際には、前年度からの申請手続きが必要とされているため、研究開始直後に購入することは困難であった。しかし、購入手続き中に不慮の事故で死亡したヒツジからサンプルを入手することが可能となり、必要な組織を採取し実験に使用することができた。現在は採取したサンプルを用いて、昨年度に行うことができなかったGH分泌細胞とT1R1あるいはT1R3受容体が共発現しているかどうかを、蛍光二重染色によって解析中である。また、下垂体の培養条件を現在検討しており、条件決定後すぐに実験に取りかかることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、昨年度に行えなかった実験についてはすでに取り組んでおり、条件の最適化を検討している。まず今年度は1) 蛍光二重染色による下垂体におけるT1R1およびT1R3受容体の局在を明確にし、2)初代下垂体培養細胞を用いてGH分泌にT1R1およびT1R3受容体がかかわるかどうかを検討する。免疫染色に関しては、すでに切片は作製しており染色条件を現在検討中である。初代下垂体培養細胞を単離する条件は本研究課題において重要な実験内容である。しかし、反芻家畜の下垂体、特にGH分泌細胞の単離はラットやマウスと比べ極めて困難であることから、酵素の選択や消化時間を検討する必要がある。そのため、多くのヒツジを供試する必要があるが、十分な頭数を確保することが難しい。そこで、初代培養と同時にスライス培養を用いて条件を決定し検討する。 本年度ではT1R1およびT1R3受容体のリガンドを明らかにするために、発現ベクターの作製が必要であるが、60%ほど完了しているため完了次第実験に取りかかることが可能であるため問題はない。また、リガンド探索にはT1R1およびT1R3受容体だけではなく、α-gustducinも同時に必要であるが、すでにクローニングは完了しており、発現ベクターを作製することは容易である。動物実験に関しては、これらの実験が終了次第取りかかる予定であるが、投与および給与濃度はすでに決定しているため、迅速に開始することが可能である。以上の方策に基づいて、今年度の研究を行う。
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