2013 Fiscal Year Annual Research Report
イネ褐条病細菌由来の宿主特異性決定エフェクターの分子認識と免疫反応誘導機構の解明
Project/Area Number |
25892028
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
近藤 真千子 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助手 (40645975)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | エフェクター / 免疫 / 植物 / 細菌 / TypeIII分泌 / ETI |
Research Abstract |
特定の植物病原細菌が感染できる植物種は限定されており、このような宿主特異性の決定には細菌のTypeIII分泌装置から植物細胞内に分泌されるエフェクターを認識して誘導されるETI免疫反応が関与している。本研究では、菌株間で宿主特異性が厳密である褐条病細菌Acidovorax avenaeの菌株間における宿主特異性の解明を目的として、イネやタバコにおけるETI免疫反応に関与するA. avenae N1141菌株のTAD1分子の認識機構と植物種におけるTAD1認識による免疫誘導機構の共通性と多様性について調べる。昨年までに、TAD1欠損株を接種したイネにおけるETI免疫反応ついてさらに詳細に調べた。その結果、ETI免疫反応の一つである過敏感細胞死誘導時に発現誘導されるイネ転写因子の転写量がN1141野生株を接種したイネ培養細胞に比べてTAD1欠損株を接種したイネ培養細胞では減少している事が明らかとなった。また、TAD1エフェクターのイネ細胞内への輸送機構についてTAD1のCyaA融合タンパク質発現菌株を用いてTAD1の分泌解析を行ったところ、TAD1エフェクターがイネ細胞内ではなく培地上清へ分泌されていることが明らかとなった。このことから、イネによるTAD1の認識がイネ細胞内ではなくイネ細胞外で行われ、ETI免疫反応が誘導されているという新たな可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
TAD1エフェクターのイネ細胞内への輸送機構についてTAD1のCyaA融合タンパク質発現菌株を用いてTAD1の分泌解析を行ったところ、イネ細胞内への分泌が認められなかった。このことから、TAD1欠損株を接種したイネにおける過敏感細胞死誘導能の欠失がTAD1欠損によって細菌の増殖や運動能またはTypeIII分泌機構などに影響した結果である可能性が考えられた。そこで、TAD1欠損株の増殖や運動能について調べたところ、TAD1欠損株は野生株と同様の増殖能や運動能を持つことを確認した。また、TAD1欠損によるTypeIII分泌機構への影響について調べたところ、TypeIII分泌装置の構成タンパク質やTypeIII分泌に関わる転写因子の転写への影響は認められなかった。このことから、TAD1欠損株を接種したイネにおける過敏感細胞死誘導能の欠失はTAD1分子の欠損によるものであることが結論づけられた。このような確認を行っていたため、やや達成度が遅れたと考える。しかし、このような確認を行い、さらにTAD1エフェクターが培地上清へ分泌されていることが明らかとなったことから、TAD1がイネ細胞外で認識されている新たな可能性が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果から、TAD1エフェクターがイネ細胞内ではなく培地上清へ分泌されていることが明らかとなり、イネによるTAD1の認識がイネ細胞外で行われているという新たな知見を得た。そこで、本年度はタバコにおけるTAD1分子の分泌機構の解明と、イネとタバコにおけるTAD1の認識機構と免疫反応誘導機構の解明を中心に研究を行う。
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