2013 Fiscal Year Annual Research Report
コアコレクションを用いたダイズのセシウム蓄積性に関与する遺伝因子の探索
Project/Area Number |
25892029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高木 恭子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター土壌肥料研究領域, 任期付研究員 (40707634)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 育種学 / 遺伝学 / ゲノム |
Research Abstract |
現在日本農業では、放射性物質による農作物の汚染を防ぐための技術開発が急務となっている。中でもダイズは放射性セシウムが子実に移行しやすいことから、低セシウム蓄積品種の開発が重要な課題となっているが、セシウムの吸収・蓄積に関する遺伝因子や遺伝的多様性はほとんど明らかとなっていない。そこで本研究では、遺伝的多様性を少数の系統で評価できる「コアコレクション」を中心としたダイズ遺伝資源を対象としてセシウム蓄積に関する遺伝的多様性を調査し、ダイズ子実のセシウム蓄積性に関与する遺伝因子の同定や低セシウム蓄積品種の開発に向けた手がかりを得る。 本年度はまず、全国の試験圃場で栽培された代表的な栽培品種の種子中の非放射性セシウム(133Cs)含量を調査した。その結果、同じ品種でも栽培圃場や栽培年度によってセシウム含量が異なることが明らかとなった。そこで、これらの栽培圃場の中で最も高いセシウム含量を示した圃場で2年間に栽培された「世界のダイズ」コアコレクションと国内の主要品種について、種子中のセシウム含量の調査を行ったところ、各系統のセシウム含量は栽培年によって異なっていたが、両年とも系統間で差が認められた。また、年次間にも、ある程度の相関が認められたことから、ダイズのセシウム蓄積性は環境による影響を受けやすいものの、遺伝的な多様性があることが示唆された。一方、セシウムの蓄積にはカリウムの吸収・蓄積メカニズムの関与が示唆されていることから、カリウム含量についても同時に調査を行ったところ、各系統のカリウム含量は2年間ともよく似た値を示し、非常に高い年次間相関が認められた。しかしながら、セシウムとカリウム含量の間には明確な関連性は認められなかったことから、ダイズ子実におけるセシウムの蓄積はカリウムと連動するものではないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、ダイズ子実におけるセシウム蓄積に遺伝的多様性が存在する可能性が示唆されたことは、セシウム蓄積性に関する遺伝因子の同定や低セシウム蓄積品種を開発する上で非常に重要な成果である。また、全国の試験圃場で栽培されたダイズ種子を分析することによりセシウム蓄積性の系統間差を比較しやすい圃場が明らかになったことから、次年度の効率的な研究推進が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は「日本のダイズ」コアコレクションなど、さらに幅広い遺伝資源のセシウム蓄積性の調査を行うとともに、安定的にセシウム蓄積性の遺伝的差異を検出できる栽培条件を確立することにより、遺伝解析や低セシウム蓄積品種の開発に適した品種・系統の選定と、それらの材料を用いた遺伝解析を目指す。
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