2013 Fiscal Year Annual Research Report
融雪水と広域流動系を考慮した地すべり地の地下水起源推定手法の開発
Project/Area Number |
25892030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
土原 健雄 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究所・資源循環工学研究領域, 主任研究員 (30399365)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 地すべり / 地下水涵養 / 融雪水 / 同位体 |
Research Abstract |
地すべり活動に融雪水の影響が推測される山形県七五三掛区域の地すべり地を対象とし,地すべり地を含む流域内において,標高の異なる複数地点に降水採取器を設置し,降水の採取を行うとともに,積雪サンプルの採取を実施した.また,流域内の河川水の採取,地すべり地における地下水の採取を実施した.さらに,融雪水の同位体分布を把握するため,地すべりブロック内に設置されている融雪量計の排水の採取を開始するとともに,集水域の標高が異なる河川を融雪期の採水地点として選定した.地すべり地内の地下水の水質組成,放射性同位体トリチウム濃度は深度によって異なる値を示し,特に酸素・水素安定同位体比は深度別に段階的に小さくなる傾向を示した.これより,地下水は混合の小さいまま多層的に地すべり地内を流動していることが示され,酸素・水素安定同位体比が地すべり地の涵養源の推定に活用できることが確認された.標高が異なる地点の降水の酸素・水素安定同位体比分布は,それぞれの地点で標高が高くなるにつれて同位体比が低くなる高度効果を示しつつ,時期によって異なる傾向を示した.また,雨と雪の酸素・水素安定同位体比は異なる直線上に分布することから異なるd値を示し,時期によって異なる気団により生成された降水,降雪が流域内に供給されていることが推測された.地すべり地の地下水の酸素・水素安定同位体比は雨と雪の両者の直線の間に分布しており,地すべり地の地下水への降水と降雪の影響を分離する指標としてd値が活用できる可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地すべり地及びその流域において,地下水,河川水,雨,雪の採取を行い,環境同位体・溶存イオン等のデータの蓄積を行うとともに,それらの分布傾向から降水と融雪水の影響を分離する指標の選定を行っており,研究はおおむね順調に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
雨,雪,地下水,河川水の環境同位体・溶存イオン等のデータの蓄積を継続し,それらの季節変動性を捉えるとともに,季節変動の小さい地域での地下水,地表水の同位体比の比較検証,雪から融雪水への相変化時の同位体比の変化の観測を行う.これらのデータを用いて,地すべり地の地下水への融雪水の寄与の推定を行い,広域流動地下水の影響を考慮した地すべり地の地下水の涵養域を推定する手法の構築を行う.
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