2013 Fiscal Year Annual Research Report
鼻性NK/T細胞リンパ腫における溶解感染誘導の検討
Project/Area Number |
25893008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
上田 征吾 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90447102)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 鼻性NK/T細胞リンパ腫 / EBウイルス |
Research Abstract |
まず鼻性NK/T細胞リンパ腫細胞株での、EBV溶解感染のマスター遺伝子であるBZLF1の内因性発現を定量リアルタイムPCRで確認したところ、ハウスキーピング遺伝子に比べ、著しく低く発現していることを確認した。そこで、複数の試薬を添加培養し、BZLF1の発現を検討したが、溶解感染の誘導は現在のところ確認できていない。しかし検討した試薬の一つであるSp1転写因子阻害薬において、MTSアッセイを用いて検討したところ、濃度依存性に細胞死をもたらすことが確認された。さらにこの阻害薬がSp1の阻害を介し、アポトーシスを抑制する蛋白であるBIRC5を阻害し、また細胞周期を促進する蛋白であるCDK1も阻害し、アポトーシスを誘導することを確認している。本リンパ腫はEBウイルス潜伏感染様式の2型をとるとされ、本リンパ腫細胞株もEBウイルス潜伏感染蛋白であるLMP1を発現しており、本蛋白は癌原性と考えられている。そこでLMP1の発現が、これらBIRC5やCDK1の発現に関与しているかを、LMP1をsiRNAでノックダウンした細胞株で確認したところ、これらの蛋白が発現低下し、アポトーシスを来たしていることをウェスタンブロット法にて確認した。すなわち、本リンパ腫ではLMP1を介してBIRC5やCDK1の発現が亢進していることが示唆された。またSp1阻害薬は海外にて治験が進行しているものものあり、本リンパ腫の治療に本阻害薬を用いることが将来期待され、本年の国際EBV学会に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本リンパ腫において、細胞株を用いて溶解感染の誘導を試みたが、現在のところ有用な薬剤は認められていない。しかしながら、新しい知見が確認され、その実験が進行しており、おむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに複数の試薬を用いて、細胞株の溶解感染の誘導を試みる。BZLF1発現を定量リアルタイムPCRにて確認し、発現上昇が認められる様ならフローサイトメトリーにてBZLF1陽性細胞の割合を確認する。また7-AAD染色後フローサイトメトリーを行い、細胞死の割合を確認する。さらにMTSアッセイを用いて腫瘍細胞の増殖能を確認する。候補試薬を発見することができなければ網羅的な解析も考慮する。またガンシクロビルなどの抗ヘルペスウイルス薬の併用により、EBウイルスの複製が抑制され宿主細胞死が促されることで、更に特異的にウイルス陽性腫瘍細胞死が促進されることが報告されているため、ガンシクロビル併用下で本リンパ腫細胞株を治療し、7-AAD染色後フローサイトメトリーを行って細胞死の割合を確認する。さらにMTSアッセイを用いて腫瘍細胞の増殖能を確認する。 溶解感染の誘導実験以外には、サバイビンやサイクリン依存性キナーゼ1の発現を免疫組織化学染色にて解析し、臨床的にもこれらの蛋白の発現があるかどうか確認する。 以上のin vitroで検討した薬剤を本リンパ腫のモデルマウスを作製し、抗腫瘍効果をin vivoでも確認したい。
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