2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗炎症性脂質メディエーターを用いた血管疾患の新たな治療戦略の検討
Project/Area Number |
25893053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮原 拓也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20704943)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 抗炎症性脂質メディエーター / 内膜肥厚 / 動脈硬化 / 動脈瘤 |
Research Abstract |
本研究では、まず血管障害後の内膜肥厚の形成過程において、炎症反応の収束がもたらす効果に関して着目し、抗炎症性脂質メディエーターが血管障害後の炎症反応を収束させ、その結果として内膜肥厚が抑制されるかを検討していくことを目的としている。 まず、動物モデルでラット頸動脈のバルーン擦過モデルを作製している。体重300-350gのオスのSDラットを2%イソフルレンで麻酔したのち、2Fr Fogartyバルーンカテーテルを外頸動脈から挿入し、バルーンを総頸動脈で拡張させて血管壁の擦過を3回繰り返す。カテーテル抜去後、その近位にて外頸動脈は結紮する。擦過後14日目と21日目に潅流固定後に頸動脈の標本を採取しelastica van gieson染色を行い、内弾性板の内腔側に新生内膜肥厚が形成されることを確認された。内膜肥厚の形成の評価は内膜/中膜の面積比(I/M ration)を用いて評価をしている。現在作製した動物モデルではI/M rationは0.5~1.0の間の値となっているがまだばらつきを認めるため、まずこの値が一定になるようにモデル作製の安定化を図っている。また、Sham群として左外頸動脈を単純結紮(即ち閉塞)したモデルも作製したが、こちらでは総頸動脈の内膜肥厚形成を認めなかったため、内膜肥厚モデルとしては問題と考えられる。 一方、細胞培養の実験に関しては、現在ラット大動脈の平滑筋細胞の培養を行っており、培地を含めた培養条件の設定を調整している。培地の血清濃度として10%と20%を試している段階であるが、現時点では10%でも細胞の発育条件として問題ないことを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の下半期からの開始予定であったが、研究開始が遅れたため現在動物モデルの作製を行っている段階である。また動物モデル作製にあたって手技の安定化を図るのに時間を要しているため、当初の実験計画よりもやや遅れている。しかし、安定した内膜肥厚モデルの作製の成否が実験結果に大きく関わってくるため、多少時間がかかることはやむを得ないと考えている。また、培養細胞を用いた実験に関しては、現在ラット大動脈の平滑筋細胞を用いた実験を開始したところであるが、培地を含めた培養条件の設定を調整している段階であり、それが決まれば次の実験計画に移れると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
動物モデルではラット頸動脈のバルーン擦過モデルを用いて、血管障害後の細胞増殖、白血球の浸潤、炎症性サイトカインの発現、内膜肥厚の形成などについてレゾルビンDやプロテクチンDの効果を検討する。また、治療群の薬剤(100ng, 1μg, 10μg)投与は外側尾静脈より術直後から術後7日目までの間に行い、生食を静脈内投与したものを対照群とする。今後予定として急性期の評価としては、擦過後3日目の新鮮凍結切片を用いて①細胞増殖、②白血球の浸潤、③組織標本を用いて炎症性サイトカインや細胞接着因子の発現などを評価する。④遠隔期の評価として、擦過後14, 21日目のホルマリン潅流固定標本を用いて内膜肥厚の形態学的評価を行う。①細胞増殖:細胞周期を関連タンパクであるKi67による免疫染色により評価する。②白血球の浸潤:白血球共通抗原であるCD45による免疫染色を用いて中膜への白血球浸潤を評価する。③炎症性サイトカインの発現:擦過3日目の標本を用いて免疫染色やqPCRなどにより炎症性サイトカインや細胞接着因子の発現を検討する。④新生内膜肥厚:擦過後14, 21日目のホルマリン潅流固定標本を用いてelastica van gieson染色を行い、内膜肥厚の程度を観察する。その形態学的指標として、内膜/中膜面積比(intima/media ratio: I/M ratio)を用いる。 培養細胞を用いた実験では、ラット大動脈の平滑筋細胞を用いる。薬剤によって細胞の増殖や遊走が抑制されるかを検討する。細胞増殖に関してはAlamar blueを用いproliferation assayを、また遊走に関しては8μmの有孔性のtranswell を用いたmigration assayで評価する。その他、血管平滑筋細胞の活性酸素の産生、炎症性サイトカインの発現などに対する薬剤の効果を検討する。
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