2013 Fiscal Year Annual Research Report
咬合刺激低下歯に矯正力を加えた際に生じる虚血障害のメカニズム解明とその予防
Project/Area Number |
25893073
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
臼見 莉沙 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (90706946)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 歯科矯正学 / 歯根膜細胞 / 咬合刺激低下 / LIPUS / VEGF |
Outline of Annual Research Achievements |
矯正臨床において、咬合刺激低下歯に急激に矯正力を加えると歯根吸収や骨性癒着、歯髄壊死が生じることが知られているが、その詳細なメカニズムについては明らかにされていない。これまでわれわれは咬合刺激低下歯に対する歯の移動を行った際、正常咬合歯とは異なる移動様相を呈しCD31・VEGF-A ・VEGFR-2の発現など血管系に影響を与えることを明らかとし、歯根膜においてさらなる虚血障害が起っていることを提言してきた。また歯の移動開始後、経時的に血管内皮細胞(CD31陽性細胞)だけでなく他の歯根膜細胞にもVEGF-A・VEGFR-2の発現が多く認められ、VEGFR-2陽性細胞が形成・修復過程に何らかの役割を担っていることも示唆された。しかし、その詳細なメカニズムは不明であり、矯正力による違いや、組織障害、またその修復過程は明らかとなっていない。 VEGFによるVEGFR-2誘導に着目した歯根膜組織の再生、修復機構を明らかにするため、ヒト・テロメアーゼ遺伝子を安定発現させた不死化歯根膜細胞クローン細胞を作製しているが、設定条件が安定せず難儀を要している。条件が安定し次第、研究実施計画書に準じて解析を行う予定である。 また以前よりわれわれの実験モデルとして用いているラット咬合刺激低下モデルを用い、12週齢より2週間咬合刺激を低下させ、その廃用性変化に対する組織賦活化を目的にLIPUSを2週間照射し組織学的変化、放射線学的変化の解析を行った。今後実験的歯の移動を行い同様の解析を進める予定である。 矯正臨床において未だ明らかとなっていない咬合刺激低下歯の矯正学的移動で生じる組織障害の機序の解明、分子生物学的手法を用いて、その分子機構の理解の下での、予防法、処置法が明らかになれば、歯科矯正分野における新たな治療法確立への一助となるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯根膜はさまざまな細胞の集合体であることから、これまで初代培養の歯根膜細胞を用いた研究では、歯根膜サンプルや実験によって、安定した実験データを得ることが困難となり、①歯根膜クローン細胞株の必要性、②継代数による細胞特性の変化、という実験上の課題があった。そこで、本研究のために、人為的に、ヒト・テロメラーゼ遺伝子(hTERT遺伝子)を安定発現させた不死化歯根膜細胞クローン細胞をはじめに作製することとしたが、設定条件が安定せず、不死化歯根膜細胞クローン細胞の作製に難儀を要しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
不死か歯根膜クローン細胞の作製が難航するようであれば、歯根膜細胞を継代培養し、3、4世代を使用することとする。そして、VEGF-Aを添加した条件で培養し、VEGFR-2の発現量と、細胞分化の過程について検討する。方法としては、蛍光抗体法による培養細胞の免疫染色と、リアルタイムPCRによるmRNAの発現量の定量化や、イムノブロッディング法によるタンパク質の発現量の評価を行う。
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