2013 Fiscal Year Annual Research Report
重症遺伝性赤血球異常症の治療モデルとしてのPK異常症への遺伝子治療法の検討
Project/Area Number |
25893164
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鶴田 敏久 九州大学, 大学病院, 講師 (70197771)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / 赤血球異常 / PK欠損 / 造血幹細胞 / iPS細胞 / CRISPR/Cas9 |
Research Abstract |
初めに野生型(WT)およびpyruvate kinase(PK) 欠損マウス胎児より皮膚線維芽細胞を採取後、レトロウイルスにより山中4因子(Klf4, Oct3/4, c-Myc, SOX2)を導入し、iPS細胞の樹立を試みた。iPS細胞誘導に先立ち、PK欠損マウス胎児より得られた線維芽細胞を用いてgenotypingを行い、PKホモ欠損であることを確認した。山中4因子導入により得られたES細胞様のコロニーは、 ALP染色、SSEA-1及びNanog 陽性であり、RT-PCR法によりES細胞マーカー(Dax1、Eras等)が検出された。同細胞ではベクター由来の外因性遺伝子は消失し、内因性のKlf4, Oct3/4, c-Myc, SOX2の発現が確認された。さらに、免疫不全マウスを用いたテラトーマ形成試験によりin vivoにて三胚葉への分化を確認し、iPS細胞の特性解析を行った。 次にトランスポゾンベクターを用い、正常 pyrivate kinase LR遺伝子を発現するベクターを構築した。得られたWTマウス由来iPS細胞を用いて、血球細胞への分化誘導を行った。胚葉体(EB)形成8-12日目にOP9 細胞上に再播種し、mVEGF、mIGFIIを含む培地、mSCF、mIL-3、dexamethasone、hEPOを含む分化誘導培地で培養後、CD71陽性細胞割合は40-60%であった。CD71陽性細胞にmicroporatorにてGFPをレポーターとする遺伝子治療用ベクターを導入し、OP9細胞上に播種した5-7日後、GFP陽性細胞コロニー細胞をピックアップしmSCF、mIL-3、dexamethasone、hEPO、mIL-6、seleniumを含む分化誘導培地でOP9細胞と共培養しものでは21日後のCD71陽性、ter119陽性細胞の割合は約30%であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においてはpyruvate kinase(PK)異常症モデルマウス由来iPS細胞より造血幹細胞ならびに赤芽球系細胞を誘導する最適条件を検討することを目標としていたが、上記のように野生型(WT)および PK欠損マウス胎児より皮膚線維芽細胞よりiPS細胞の樹立を試み、得られた細胞が三系統へ分化することを確認した。また、上記のような分化誘導培地を用いることにより血球系細胞への分化誘導を試みWTマウスでは血球系細胞の前駆細胞様細胞の樹立に成功した。 さらにZFNsの構築を行い、遺伝子治療モデル開発に向けた基礎的研究を行うことを目標としていたが、トランスポゾンベクターを用いたPK遺伝子導入ベクターの構築を行った。現在、新しい遺伝子改変ツールであるCRISPR-Cas9システムを用いたPK遺伝子の導入方を開発中であり、同方法を用いることにより、より効果的な遺伝子治療法の開発を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はpyrivate kinase(PK)欠損マウス由来iPS細胞を用いてWTマウス同様の検討を行う。また、正常PK LR遺伝子を発現するベクターをPK欠損マウス由来iPS細胞に導入し、遺伝子治療モデルを確立する。 トランスポゾンベクターによる正常PK LRの過剰発現系だけではなく、近年その有用性が注目されているCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を用いて、変異PK LR遺伝子を正常PK LR遺伝子に置き換えることによる遺伝子治療の方法を確立する。 PK欠損マウス由来iPS細胞の変異PK LR遺伝子の修復が確認されれば、血球細胞系への分化誘導を行いWTマウスと比較する。さらに遺伝子修復iPS細胞由来の造血幹細胞をPK欠損マウス個体に移植し、WTマウスとの比較を行う。溶血性貧血のモデルマウスにおいて自己細胞由来の iPS 細胞を用いた病態解明、遺伝子治療法モデルが確立されれば、これらの疾患治療を考える上で重要な知見となる可能性がある。
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