2013 Fiscal Year Annual Research Report
矯正力荷重下における炭酸アパタイト骨置換材の病理組織学的解析
Project/Area Number |
25893173
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野村 俊介 九州大学, 大学病院, その他 (60710994)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 炭酸アパタイト / 骨置換材 / 矯正力 / 生体吸収性 |
Research Abstract |
本研究は、実験動物に形成した骨欠損を炭酸アパタイト骨置換材で再建し、矯正力を負荷した場合の炭酸アパタイト骨置換材の骨への置換性を検討することである。前年度は初年度にあたり、動物実験用試料として、炭酸アパタイト顆粒及び対象試料群の調整および実験手技の確立を行った。 炭酸アパタイト顆粒の作製には、まず水酸カルシウム圧粉体を調整したのち、二酸化炭素チャンバー(相対湿度100%)で炭酸化することで、前駆体となる炭酸カルシウムブロックを調整した。次に炭酸カルシウムブロックを粉砕、ふるいで分級し、100-200μmの炭酸カルシウム顆粒を調整、その後0.8mol/Lのリン酸水素ナトリウム水溶液中に浸漬し、リン酸化を行った。リン酸化の時間を調整し、炭酸カルシウム顆粒から100%組成変化した炭酸アパタイト顆粒と、表層から10%組成変化した炭酸アパタイト顆粒の2種類を調整した。対照群として水酸アパタイト顆粒及びβ型リン酸三カルシウム(β-TCP)の調製を行った。調製した骨補填材の組成分析を粉末X線回折装置および赤外分光分析を用いて行ったが、作製した試料が目的の試料であることが確認できた。 また作成した骨補填剤のラット口蓋骨への埋入方法の確立を行った。9週齢SDラットを3%抱水クロラール水溶液にて全身麻酔を行い、口蓋粘膜及び骨膜を剥離し、口蓋骨を露出させた。骨欠損はラット上顎第一臼歯口蓋側に歯科用エンジン及びラウンドバーを用いて、直径1mm高さ1mmの骨欠損を形成、骨欠損部に試料をそれぞれ埋入し、創を閉じた。3週間の治癒期間経過後、上顎第一臼歯間にコバルトクロム製ワイヤーを設置し、歯の移動を開始した。試料が問題なく埋入されていること、また歯が移動していることがマイクロCT画像で確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は初年度であり、動物実験用試料として、炭酸アパタイト顆粒及び対象試料群の調整および実験手技の確立を行った。 炭酸アパタイト顆粒の作製においてリン酸化の時間を調整することで、炭酸カルシウム顆粒から40℃-14日の条件下で0.8mol/Lリン酸水素ナトリウム水溶液に浸漬することで100%組成変化した炭酸アパタイト顆粒が、また 40℃-45分の条件下で表層から10%組成変化した炭酸アパタイト顆粒が調整されることが分かった。また、対照群として水酸アパタイト顆粒及びβ型リン酸三カルシウム(β-TCP)を炭酸カルシウムとリン酸二水素カルシウムを用いて調製し、粉末X線回折装置および赤外分光分析による組成分析によって作製した試料が目的の試料であることが確認できた。 また作成した骨補填剤のラット口蓋骨への埋入方法の確立を行い、試料が問題なく埋入されていること、また歯が移動していることがマイクロCT画像で確認できた。試料埋入後の治癒期間を3週間に設定した後に歯の移動を開始したが、今後、治癒期間、歯牙移動期間の条件設定を調整することにより、歯がサンプル周囲の新生骨へ移動する様相を病理組織標本にて観察する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画の2年目にあたり、①動物実験試料の追加解析および②病理組織標本での検討を行う。昨年度において、粉末X線回折装置および赤外分光分析にて組成分析を行い、目的の試料が作製されていることが確認できたため、今年度は物性についての検討を行う。ピクノメーターを用いての気孔率の測定、走査型電子顕微鏡による微細構造の観察、CHNコーダーによる炭酸アパタイト顆粒の炭酸基含有量の測定を行う。 また、動物実験の手技を昨年度に確立したため、今年度は組織標本の作製を行う。一般組織染色(H&E染色)を行い、補填材の吸収程度、新生骨のリモデリング、歯根吸収の有無を評価、また補填材の吸収が見られた場合、破骨細胞性によるものかを判断するために、TRAP染色を行い破骨細胞が生じているかを確認する。また、骨の形成速度はテトラサイクリン、カルセイン、キシレノールオレンジなどの骨ラベリング法により検討する。また、歯を移動させたことによる骨置換性への影響を調べるために、サンプル埋入群、非埋入群で破骨細胞数の比較を行う予定である。
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