2013 Fiscal Year Annual Research Report
巨舌症モデルマウスを用いた摂食・嚥下機能発達と顎顔面形態成長の相互制御機構の解明
Project/Area Number |
25893183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中村 文 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 研究支援員 (50711959)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 嚥下 / 巨舌症モデルマウス / 実験動物用マイクロX線CT |
Research Abstract |
本研究の目的は、巨舌症モデルマウスを用いて、巨大舌が摂食・嚥下機能へ及ぼす影響、および、顎顔面形態へ及ぼす影響を明らかにし、さらに、機能と形態の相互関係について究明することである。本命題に対して研究を深めることは、摂食・嚥下機能の発達と障害の発症機序を解明し、顎口腔機能領域の疾患に対する予防および治療法の開発に飛躍的な進歩をもたらすと考えられる。 この目的を達成するために、本年度はまず、実験モデルである巨舌症モデルマウスを製作し、下顎骨の経時的形態変化と、顎機能のデータを収集することとした。実験モデルとして、4週齢のマウスに、ステロイド剤を4週~10週(2週間ごと)、舌に投与し、舌を肥大させた。2週間ごとに動物実験用3DマイクロCT(Rigaku)を用いて撮影を行い、形態の変化を観察した。12週齢時に、全身麻酔下で下顎運動センサーユニット用とEMG用のコネクターを鼻骨及び頭部に、標点磁石を下顎骨上に取り付け3次元下顎運動の記録を行い、両側咬筋と右側顎二腹筋筋電図も記録した。また、対照群として、生食を舌に投与したマウスも同様の記録を行った。 形態に関しては、実験群では下顎歯列幅径が対照群と比較して大きくなっており、臼歯部交叉咬合となった。また、下顎面高も大きくなった。顎運動に関しては、実験群でも対照群と同様に開口相、閉口相、前方移動相が確認され、開口運動時の顎二腹筋活動、閉口運動時の咬筋活動も観察された。全周期時間および開口相時間は、実験群では対照群と比較して延長傾向がみられた。 これらの結果から、顎顔面の成長発育を阻害するような不正咬合の存在は、咀嚼機能の発達に影響を及ぼすと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
巨舌症モデルマウス作製の段階で、ステロイド投与量を最初に低く設定して開始したこと、また、ステロイドを舌に留めておくことが困難であったことなどから、舌肥大を起こすことに時間を要した。 4週齢から10週齢までステロイドを2週ごとに投与し、12週齢時に形態や顎機能を評価してきたが、形態に関しては2週間ごとにCT撮影を行っており、骨格の変化を比較することができたことから、早期に舌肥大が生じていないことを判断し、ステロイド量や投与方法を調整する必要があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度達成できなかった舌運動の解析を行う。運動解析ソフトウェア Dipp-Motion Pro2D(ディデクト社製)を用いた、マイクロCT透視モード動画のモーションキャプチャ処理を行い矢状面観からの、舌尖部、舌背部の移動量(上下、前後)を各運動相において求める。 さらに、巨舌症モデルマウスを対象に、舌をもとの形態に戻すと、その後の摂食・嚥下機能および顎骨形態は変化するか検証する。4週齢から10週齢までステロイドを2週ごとに投与した巨舌症モデルマウスを、10週間の回復期間を設け、2週間ごとにCT撮影を行いながら20週齢まで飼育し、20週齢時に顎運動・筋活動計測装置を装着する。前年度同様に、CTを用いた顎骨形態の計測、および、顎運動・筋活動計測、舌運動計測を行い、その後、計測データを解析する。 これらの解析結果より、巨舌症モデルマウスの摂食・嚥下機能が顎骨形態に及ぼす影響、および、顎骨形態が摂食・嚥下機能に及ぼす影響について検証する。これにより、これまで立証が困難であった、機能と形態の相互作用を解明することを目指す。
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