2013 Fiscal Year Annual Research Report
冠動脈固有の側副血行路形成過程を理解するための基礎研究と種間の相同性の探索
Project/Area Number |
25893187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
有馬 勇一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (60706414)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 冠循環 / 比較解剖 / 発生 |
Research Abstract |
今年度は冠動脈の比較解剖を行うための、冠循環評価手法の開発を試みた。使用する生物種として有尾両生類を用い、アカハライモリおよびアホーロートルを入手し、トリカインを用いて麻酔下に蛍光色素を経血管的に注入し、全身の血流依存的な血管を可視化することに成功した。本法を用いて有尾両生類の冠循環形態を評価した結果、冠動脈は頭部領域より起始し、その後心臓円錐部の表面を下降して左冠静脈洞に流入することが明らかになった。心室領域においては冠血管の発達は乏しく、ほ乳類との相違が認められた。近年冠血管内皮の由来について冠静脈洞内皮あるいは心内膜細胞由来等複数の由来が示唆されているが、今回の研究に用いた有尾両生類は心室の緻密化が乏しく、生理学的研究において心室筋は心内膜側からの拡散による酸素供給を受けているとの報告もある。本研究により明らかとなった冠循環形態は冠静脈洞から連続して血管床を構成しており、心内膜細胞より構成されるとされる高等脊椎動物での報告では説明困難な形態を有している。以上の結果は第78回日本循環器学会学術集会・The 18th International Vascular Biology Meetingにて発表した。 肉眼解剖的手法と共に、共焦点顕微鏡や二光子顕微鏡を用いてマウス心臓の微小循環形態を可視化する手法の開発も試みた。蛍光標識レクチンを用いて内皮細胞を標識し、心臓を採取・固定後、ビブラトームを用いて厚さ1mmの心臓短軸断面切片を作成したのち、各種組織透明化試薬を用いて深部構造の形態評価について比較した。その結果、一部の透明か試薬により、蛍光強度を保ったまま最深500μmまでの形態を非破壊的に評価できる手法を作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において初年度の予定として計画していた、冠循環を評価する実験手法の作出については、目標とする微小循環の可視化・及び生体下での血管標識手法を作出することができた。更に微小循環の評価も期待できるマイクロフォーカスX線CTでの撮像も条件検討を開始し、次年度は更に形態の評価手法の幅が広がることが期待される。 比較解剖学的手法については、有尾両生類を対象とした形態の評価に着手することができた。当初の目標では脊椎動物全般を対象としており、次年度は現時点で開始できていない爬虫類等の生物に着手する予定である。また、生物種横断的な手法と共に、個体発生にさかのぼり冠血管の相同性を説明するメカニズムを模索する。
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Strategy for Future Research Activity |
比較解剖学的検討については、引き続き複数の脊椎動物を対象として検討を行う。同時に個体発生をさかのぼり、内皮細胞・形態形成の起源となる領域の同定および、ほ乳類の形態と特に異なっている心室領域の冠循環形態の発生・進化メカニズムを説明できるモデルの提唱を目指す。冠循環の可視化手法に着いては、特に微小循環の可視化により之まで評価が困難であった微小循環障害などの形態の差を、動物モデルを用いて検証することを予定している。
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