2013 Fiscal Year Annual Research Report
形態解析に基づく、PTSDモデル動物における不安増強機構の解明
Project/Area Number |
25893207
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
橋本 隆 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60712891)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | PTSD / コルチコトロピン放出ホルモン / 扁桃体 / エピジェネティクス / 不安 |
Research Abstract |
心的外傷後ストレス障害 (Posttraumatic stress disorder: PTSD)の病症発現の分子機構解明を目的に、情動反応の中枢となる偏桃体領域においてストレスホルモンCRHを発現する神経細胞の遺伝子発現制御のメカニズムや、分泌・形態観察を計画している。25年度は、同計画で使用するモデル動物の作出ための環境整備の他、直接費より旅費として充当し、以下二演題の学会参加発表を行った。 1) 第54回 組織細胞化学学会:FBI/SEMや自動切片回収機ATUMを使用した最新の三次元立体構築法の他、ストレス応答とその分子メカニズムに係る情報収集を行った。加えて、エンドカンナビノイド系に属する分子群の抗体に関する情報交換を行った。 2) 第119回 日本解剖学会:幼少期のストレスと脳の可塑性について、分界条床核を含む脳領域における遺伝子発現変動の結果を報告した。併せて三次元立体解析法及び、精神疾患の発症とその分子基盤に関する諸演題について情報収集を行った。 申請内容でも立体観察の重要性を強調したが、各学会でも3D解析法に関する報告が活発になされ、その有効性について再確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
PTSDモデルラットを使用し、扁桃体CRHニューロンを中心として本病態における不安増強の分子機構解明を目指している。平成25年度に提出した交付申請書の研究実施計画について、実験動物の準備(PTSDモデル動物の作出)については申請内容に沿い装置・器具を導入し、作出の環境を整備した。しかしながら、喫緊の異動とこれに伴う他研究テーマとのエフォート率の配分に変動が生じ、分担予定であったメチル化解析やマイクロダイアリシス解析等については実行に至っていない。 学会での情報を基に、選定を行ったエンドカンナビノイド系の3つの分子(CB1受容体、ジアシルグリセロールリパーゼα, モノアシルグリセロールリパーゼ)については、成体オスラット脳の凍結切片を用いて免疫組織化学法を実施し、陽性反応を捉えることに成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
異動完了に伴い、現研究機関での実験環境を早急に再構築中である。当該研究室ではスタッフ全員が電顕法を得意とすることから、計画内容にある軸索形態の超微細構造観察を含めた形態解析について、より専門的な助言が得られる。神経形態解析については、申請当初に使用予定であった共焦点レーザー顕微鏡Olympus FV1000に代わってLeica TCS SPIIに変更する。加えて、多光子レーザー顕微鏡 Zeiss LSM710 NLOが常設されているため、脳透明化の手技と合わせて解析方法の改良も検討に入れたい。 トレーサー注入や脳局所投与の実験については、前研究機関において使用していた器具・装置と大きく条件が異なる。このため、培った手技を基にスムーズに実験が行えるよう26年度分の科学研究費補助金より脳固定装置他の購入を改めて計画する。 行動解析実験については、総合大学の長所を活かして工学部技術部への製作依頼を視野に入れ、ラット用の十字高架式迷路等を経済的に準備出来るよう工夫する。 またCRHの不安惹起物質としての機能に着目して立案した本研究計画であるが、最近の研究から情動行動と密接に関与する内因性エンドカンナビノイドとPTSDとの関連も注目されている。免疫組織化学法の条件が確立したことを受けて、当該研究で観察対象とするモデル動物の扁桃体を含む脳領域を中心に、エンドカンナビノイド系に係る分子の発現動態についても観察予定とする。新環境におけるスタッフとの連携を密に、研究計画の中から特に形態解析に力点を置き本研究の推進を図っていく。
|