2013 Fiscal Year Annual Research Report
Biomimetic環境での造血幹細胞の分裂様式解析と培養条件の最適化について
Project/Area Number |
25893234
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
生島 芳子 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (00571366)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | 造血幹細胞分裂 / 娘幹細胞 / 単一細胞 / 幹細胞維持 / ニッチ / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度は、親造血幹細胞および娘細胞について単一細胞レベルで網羅的に発現解析を行っている遺伝子群の中でも親造血幹細胞の分裂パターンを分類する上で特に重要となる遺伝子群の抽出をすすめ、これに基づいて、学習モデルであるSupport Vector Machine (SVM)による造血幹細胞の分裂パターン解析を改善し、これまでに得られたデータに基づく造血幹細胞分裂パターンの再評価を行った。この結果、8週齢のマウス由来の造血幹細胞を通常の細胞培養プレートで培養した場合、その多くは2つの前駆細胞に分裂してしまうものの、培養液にAngiopoietin1 (Angpt1)を添加することで少なくとも1つの娘幹細胞が生じる細胞分裂パターンが増える傾向があること、さらにmicrowell上で同様の実験を行った場合には、Angpt1添加培養液中では2つの前駆細胞を生じる分裂パターンの割合がAngpt1無添加条件下に比べて有意に減少し、総体として造血幹細胞数の減少が抑制されるとの結果を得た。 また、本年度は娘細胞を用いた限界希釈骨髄移植実験を行うことで娘細胞の幹細胞性を機能面から評価した。microwell上で得られた娘細胞の移植データに関しては、現在フォローアップ中であるが、通常の細胞培養プレート上で得られた娘細胞に関しては、Angpt1添加培養条件下で分裂することで長期骨髄再構築能を有する娘幹細胞が多く生じることを示す移植データが得られ、我々の単一細胞遺伝子発現解析に基づく造血幹細胞分裂パターンの解析結果と一致することが確認された。 また、本年度は、昨年度までに実施したマイクロアレイデータを元に、新たに発現解析対象とする遺伝子群の決定を行った。さらに、来年度に向け、ニッチ分子であるN-cadherinやヒアルロン酸で修飾したmicrowell plateの準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は最終データを得るまでに時間のかかる娘細胞の限界希釈骨髄移植実験を精力的に行い、そのうち既に得られたデータの結果は、我々の単一細胞網羅的遺伝子発現解析データに基づく造血幹細胞分裂パターン分類の結果と相関するものであった。 また、N-cadherinやヒアルロン酸といったニッチ分子によって修飾したmicrowell上での造血幹細胞分裂パターンの解析に向け、共同研究者らと、microwellの準備をすすめている。 更に本年は、昨年度までに行ったマイクロアレイデータに基づき、新たに解析対象とする遺伝子群の決定も進み、来年度以降の研究の進展にむけた下準備が順調に進行したと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、今年度中に行った移植実験のフォローアップを続ける。 また、現在作製中のニッチ分子で修飾したmicrowell上での造血幹細胞培養と娘細胞の回収および単一娘細胞網羅的遺伝子発現解析(Paired Daughter Cell (PDC) Assay)を進める。得られたデータをSVMを用いて解析し、親造血幹細胞の分裂パターンを評価して、ニッチ分子が造血幹細胞分裂に与える影響を評価する。 PDC assayにおいて娘幹細胞を維持するような結果が得られた場合には、これらの娘細胞を用いた限界希釈骨髄移植実験を進めるとともに、live imagingにより造血幹細胞分裂の経時的観察を行う。こうした実験の結果を造血幹細胞の培養条件へとフィードバックし、造血幹細胞を維持・増幅できる培養条件の最適化を目指す。 さらに、今年度までに新たに抽出した新しい遺伝子セットを用いたPDC Assayを進め、造血幹細胞の自己複製に重要な新たな遺伝子や遺伝子ネットワークの抽出を目指す。
|
Research Products
(2 results)