2013 Fiscal Year Annual Research Report
クリティカルケア領域における看護師の身体抑制に埋め込まれた臨床の「知」
Project/Area Number |
25893254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
中野 真理子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60712312)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 身体抑制 / クリティカルケア / 看護師 / 臨床の「知」 |
Research Abstract |
身体抑制は、患者の人間としての尊厳を奪い、家族にも深い悲しみを与える非人道的な行為であり、2000年からの「身体拘束ゼロへの取り組み」を機に身体拘束・解除フローシートやチャートを活用し減少傾向にある(内山,2011)(栗畑,2010)。しかし、クリティカルケア領域では特にセイフティマネージメントの視点から「必要悪」として未だ行われているのが現状である。そして、一人ひとりの患者に対して状況下での判断と実践は、個々の看護師の臨床の「知」である。 卓越した看護実践は、状況を直観的に把握して正確な問題領域に的を絞り(ベナー,2005)、行動は自動化されており、言葉にすることのできない「暗黙知」が多い。本研究は、クリティカルケア領域において身体抑制を行う看護師の臨床の「知」を参与観察、インタビューにより明らかにすることを目的としている。 現在までに得られている結果は、患者の身体を縛るという行為を実施する、その時のみの判断や抑制の方法ではなく、予定手術の患者には術前からの術後の様子説明やICU訪問の試み、環境調整、生活リズムを整える、検査データに着目するなど、身体の抑制が必要とならないための関わりや自分の受け持ち時間内に抑制が解除できないかを査定するための試みとアセスメントを頻回に積極的に実施し「いち早く解除しょう」とするための看護実践が行われている。また、看護師は「私」という1人称ではなく、「私たちICUの看護師が、、」あるいは「私たちICUの看護は、、」とチーム全体の看護を考えていることも特徴である。 これらの結果からも、看護師の語りから「暗黙知」が明らかなりつつあり、今後のインタビユーに期待したい。本研究がクリティカルケア領域での身体抑制に対する看護の質の向上、患者および家族に対してよい看護を提供することの一助となると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属大学の倫理委員会の承認を得るまでに時間を要し、最終的に12月中旬に承認された。その後、臨床への参与観察と臨床看護師にインタビューを実施することから臨床研究審査が必要となり、当初の研究実施計画から2か月遅れ、平成26年2月研究実施が承認された。 すぐに対象となるICUと調整を行い、参与観察、インタビユーと並行してデータを分析し、現在3名の看護師のインタビユーと分析を終えている。遅れているように感じられるが、予定している10名全員のインタビユーを終えて分析を始める方法ではなく、1人目の分析結果を踏まえて2人目のインタビユーを実施し、2人目までの分析結果を踏まえて次のインタビユーを実施していく継続比較分析を行っているため順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、7名のインタビュー日程調整を行い、11月末までには継続比較分析(概念として抽出したものが他の人のインタビューの中にも語られているかの確認、対極の現象が語られているかの確認)をしながらインタビュー、逐語録の作成、分析を進め、理論的飽和(これ以上新しい概念はないという判断)に達するまで続ける。 その後は、遅くとも平成26年12月末までには結果図、ストリーラインを作成し、研究メンバーで意見交換を重ね、信頼性を確保していく。 平成27年1月から論文作成に取り掛かり、2月中には最終考察まで書き、推敲を重ね3月中旬には完成させる予定である。
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