2013 Fiscal Year Annual Research Report
グラム陽性細菌表層の共通抗原によるMRSA感染防御
Project/Area Number |
25893286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
黒川 健児 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (80304963)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 細菌宿主相互作用 / 免疫賦活化 / 細胞壁タイコ酸 / 黄色ブドウ球菌 / 国際情報交換 / 韓国 / アメリカ合衆国 / ドイツ |
Research Abstract |
黄色ブドウ球菌種においてWTAの構造多型が報告されている。β-GlcNAc WTAを抗原とするワクチン開発の構想のもと、我々が同定した抗原エピトープであるβ-GlcNAc WTAを持つ菌株の拡がりを調査した。黄色ブドウ球菌株12種を収集し、精製した抗βGlcNAc WTA抗体を用いて抗体依存の補体活性化能、並びに貪食誘導能を試験した。その結果、現在米国で拡大しているMRSA株であるUSA300株やUSA400株は、いずれもβ-GlcNAc WTAをエピトープに持つことが判明した。一方、ドイツの共同研究者から提供を受けたST395株由来のPS187株に対しては、抗β-GlcNAc WTA抗体は作用しなかった。この結果はPS187株のWTAの修飾糖がN-アセチルグルコサミンではなくN-アセチルガラクトサミンであること、さらにリビトールリン酸骨格ではなくグリセロールリン酸骨格を持つとの知見と矛盾しない。その他に、抗β-GlcNAc WTA抗体に不応答性の黄色ブドウ球菌株が2種見出された。そのうちの1種であるLowenstein株はβ-GlcNAc修飾酵素TarSを持たないことが、PCR解析から示唆された。もう一種Smith Diffuse株はtarS遺伝子を有しており、今後WTA 構造の精査を含め原因の究明を行う計画である。 以上の結果から、β-GlcNAc WTAを免疫原として用いるMRSA感染防御の戦略は、現状で拡がりを見せている主要なMRSA株に対して対処しうる一方、防御できないMRSA株が一部あることが明らかとなった。特定の抗原を用いたワクチンが供せられ実際に効果を示す場合、その免疫系から逃避可能なMRSA株が新たな拡がりを見せてくると推測されることから、WTAを抗原として用いるワクチン開発を進める際には、他価抗原として開発する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の主題であるグラム陽性菌の収集と抗β-GlcNAc WTA抗体に認識されるWTAを持つ菌体の探索はあまり進んでいない。これは平成25年度には黄色ブドウ球菌株を収集し、ワクチン抗原として期待しているβ-GlcNAc WTAを有するMRSA株の拡がりを調べることを優先したことによる。その結果、β-GlcNAc WTAを有するMRSA株は、現状では世界的に優性であることを示唆する結果を得た。一方でWTAの構造の違いを背景にこのワクチン防御戦略からは逃避しうる菌株も見出され、ワクチン開発時には多価のWTAを抗原とする必要性が明白となった。グラム陽性菌の収集と探索においても、多価抗原としてのWTAワクチンの開発に対応できるよう対策をとりたい。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、平成26 年度もMRSA 株のβ-GlcNAc WTA (βアノマー結合したN-アセチルグルコサミンを修飾糖に持つリビトールリン酸鎖型の細胞壁タイコ酸) と免疫学的に同じ構造を有するグラム陽性菌、あるいは正常細菌叢に属する菌、あるいは非病原性細菌の探索を進める。収集したグラム陽性菌を培養し、固定後に懸濁して抗WTA 抗体と反応させ、特異的結合があるかについてフローサイトメーターを用い調べる。 第二に、抗β-GlcNAc WTA抗体の持つ生体防御能を究明する。昨年度我々はβ―GlcNAc WTAをマウスに免疫することで抗体価が上昇し、またMRSA防御能を獲得できることを発表した (Takahashi K., et al. 2013)。その具体的な作用機序について、免疫原の構造との対応や、サイトカイン誘導能との関わりを追究していく予定である。現在までの処、製薬企業各社の取り組みにも関わらず黄色ブドウ球菌ワクチンの開発は成功しておらず、ヒトにおいては抗体産生誘導が必ずしも黄色ブドウ球菌感染からの防御に十分でない節がある。そこで、ヒト好中球被貪食後の黄色ブドウ球菌の運命を検証する。これまでのところ、試験管内では被貪食後も黄色ブドウ球菌は一部が生存し増殖を再開するとの予備的知見を得ている。今年度はこれが生理的に重要な知見であるのか検証するとともに、黄色ブドウ球菌の各種変異体を用いて免疫逃避の分子機構を解明していく。得られた知見はWTAを抗原とする、MRSAワクチンの開発につなげていく構想である。
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[Journal Article] Glycoepitopes of staphylococcal wall teichoic acid govern complement-mediated opsonophagocytosis via human serum antibody and mannose-binding lectin.2013
Author(s)
Kurokawa K, Jung DJ, An JH, Fuchs K, Jeon YJ, Kim NH, Li X, Tateishi K, Park JA, Xia G, Matsushita M, Takhashi K, Park HJ, Peschel A, and Lee BL.
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Journal Title
J. Biol. Chem.
Volume: 288
Pages: 30956-30968
DOI
Peer Reviewed
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