2013 Fiscal Year Annual Research Report
In vivoイメージングを用いた毛包幹細胞の恒常性維持機構の解明
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25893289
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森田 梨津子 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター, 研究員 (20700040)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | In vivo imaging / 毛包幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己複製能と多分化能を有し、組織・臓器の恒常性を支える幹細胞は、生涯にわたって細胞の供給源として機能するために、様々な内因性・外因性のストレスに対して柔軟かつ的確に対応し、自身を維持していると考えられる。皮膚とその付属器官である毛包は、生涯にわたって再生を繰り返す器官であり、幹細胞研究の良いモデルである。そこで本研究では、従来の組織学的、遺伝学的解析に加えて、時空間的なin vivoライブセルイメージングを利用して毛包幹細胞の集団挙動を計測することにより、幹細胞システムの恒常性を支える柔軟でロバストな機構を理解することを目指す。平成25年度は、多光子顕微鏡と細胞の核および細胞膜を蛍光標識した遺伝子改変動物を用いて、休止期、退行期のみならず、最も毛包が長く伸長した成長期においても、毛包全体と周囲組織を視野に捉え、毛の産生される様子を1細胞レベルの解像力でin vivoにおいて観察することを可能とした。さらに、こうした細胞動態を48時間の連続ライブイメージングにより安定的に捉えることを可能としている。また、数日おきに同一毛包を観察することを可能とし、従来の遺伝学的細胞系譜追跡法に加えて、光変換型蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変動物を用いることで、同一毛包における特定の幹細胞を経時的かつ間歇的に長期追跡することを可能とした。さらに、特定の幹細胞集団を人為的に消失させた時の修復応答の解析を開始し、毛包において特定の幹細胞が損傷・消失しても、これを修復し、安定的に維持しようとするシステムの存在が示唆された。この独自に確立したin vivoイメージング技術は、生体内のより自然な幹細胞動態を明らかにするだけでなく、時空間的に加えられた環境変化に対する細胞の応答や動態の変化を、遺伝子発現の変化とともに解析することを可能とするものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画において、初年度は本研究の核となる技術として、成体毛包のin vivoイメージングの確立を挙げていた。本目標は予定通り達成し、すでに正常時および損傷時における幹細胞動態の解析に着手している。 また、これまでに成体毛包幹細胞の3次元in vivo動態解析についての報告は、1研究室からの報告に留まっており(Nature 487:496-9, 2012; Science 343:1353-6, 2014 )、これまでの報告では、最も長い連続観察時間は16時間程度に留まり、毛包が長く伸長する成長期毛包全体を捉えた報告は存在しない。しかしながら、本研究においてはこの点を大幅に改善し、48時間、連続的に細胞動態を観察することを可能とした。さらに、最も毛包が長く伸長した成長期においても、毛包全体を1細胞レベルの解像力で捉えることを可能としている。本技術の確立により、生体内のより自然な幹細胞動態を明らかにするだけでなく、時空間的に加えられた環境変化に対する細胞の応答や動態の変化を、遺伝子発現の変化とともに解析することを可能とするものと考えられる。以上の事由より、本研究は当初の計画以上に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度より、独自に確立したin vivoイメージングシステムを駆使して、毛包幹細胞の正常時における細胞挙動の解析に着手している。平成26年度は、本解析を継続するとともに、幹細胞集団の枯渇や周囲環境の損傷に対して、細胞はどのように備え、恒常性を維持しようとするのかを明らかにするために、特定の幹細胞集団や周囲環境を任意に消失させたときの幹細胞の修復応答を解析し、幹細胞の恒常性維持における細胞外環境の役割を理解する。 本解析により複数の幹細胞・前駆細胞間の可逆的な分化能とヒエラルキー、ニッチ間の連携機能を明らかにするとともに、幹細胞の維持システムの恒常性を明らかにできると考えている。また、幹細胞の恒常性維持における幹細胞ニッチからのシグナルの寄与を検証し、幹細胞の生存と恒常性維持に対して、幹細胞自身の内因性性質と周囲の幹細胞ニッチからの外因性シグナルがどのように協調しているのかを明らかにする。
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Research Products
(1 results)