2013 Fiscal Year Annual Research Report
損傷脊髄での可塑性誘導に対するエネルギー供給に関する研究
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25893291
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
市原 克則 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 流動研究員 (50710711)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 再髄鞘化 / グルコース |
Research Abstract |
損傷脊髄に認められる脱髄病変はリハビリテーションにより一部再髄鞘化することが認められるが、再髄鞘化に必要な因子の解明は未だ不十分である。髄鞘形成には大きな形態変化を必要とするため、本研究では神経組織のエネルギー源であるグルコースおよびアストロサイトに貯蔵されているグリコーゲンに着目し、再髄鞘化に影響する新たな因子の解明を目的とした。 髄鞘はオリゴデンドロサイトにより形成されており、オリゴデンドロサイト前駆細胞から分化することで、成熟したオリゴデンドロサイトとなり機能を発揮する。そこでオリゴデンドロサイトの増殖および分化能を評価するために、in vitro実験系としてオリゴデンドロサイト前駆細胞の初代培養系を、in vivo系として初代培養オリゴデンドロサイト前駆細胞の移植とそれに伴う移植細胞の再髄鞘化評価系の構築を試みた。その結果、in vitro系であるオリゴデンドロサイト前駆細胞の初代培養系を確立し、グルコースの低下によりオリゴデンドロサイトの分化が抑制され、グリコーゲンの代謝産物である乳酸の添加により回復する傾向を得た。さらにin vivo系である移植実験系において、損傷脊髄での移植細胞の生着を認めた。また、マウス組織内でグリコーゲン利用に必要と考えられる遺伝子のオリゴデンドロサイトにおける発現を認め、さらに本遺伝子の発現ベクターおよびshRNAによるノックダウンベクターを作製した。一方アストロサイトへの介入として、GFAP-CreERT2マウスとPTEN floxedマウスを掛け合わせ繁殖している。 以上より、再髄鞘化の評価に必要な実験系を概ね確立し、確立したin vitro系を用いて、オリゴデンドロサイトの分化に対するグルコースおよび乳酸の影響を一部評価した。今後、オリゴデンドロサイトおよびアストロサイトへの介入実験を行うことで、詳細なメカニズムの検討を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄損傷の治療ターゲットである再髄鞘化促進のための新たな因子の解明を目指して、研究を推進した。平成25年の計画として、(1) グリコーゲンの利用経路の推定と遺伝子発現の評価、(2) 標的のshRNAの作成、(3) in vitroおよび (4) in vivo再髄鞘化評価系の確立と髄鞘形成の評価をすることを目標とした。さらに次年度評価するために、(5) GFAP-CreERT2マウスとPTEN floxedマウスの掛け合わせと繁殖を行うこととした。(1) として、免疫染色法によりオリゴデンドロサイトマーカーであるOlig2発現細胞において乳酸輸送に関与する遺伝子が発現することを認め、さらに (2) として本遺伝子に対するshRNAを作製した。再髄鞘化を評価するために、(3) 髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイトの前駆細胞の初代培養系を確立し、グルコース低下に伴い分化が抑制され、グリコーゲン代謝産物である乳酸の添加により回復する傾向が認められた。また、(4) 損傷脊髄に対するオリゴデンドロサイト前駆細胞移植にともなう、移植細胞の再髄鞘化の評価系の確立については、移植2週間後における移植細胞の生着を観察した。今後再髄鞘化を評価する予定である。(5) としてのマウスの繁殖はおおむね良好に行われ、一定数のマウスが誕生している。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、まず初めにin vitro系において、グルコースおよび乳酸がオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖および分化能に与える影響をさらに詳細に評価した後、作製したshRNA等を用いてメカニズムの解明を目指す。さらに確立しつつあるin vivo評価系を確立させ、移植細胞の再髄鞘化能の評価を行う。具体的には移植後6週後に成熟したオリゴデンドロサイトマーカーであるCC1陽性細胞の移植細胞に対する割合を評価する予定である。また前年度繁殖したGFAP-CreERT2; PTEN floxedマウスの解析を行う。本マウスの脊髄をIH impactorを用いて損傷させた後タモキシフェンを投与することで、アストロサイト特異的にAktシグナルを活性化させた際の、オリゴデンドロサイトの再髄鞘化への影響を評価する。さらにこのノックアウトマウスを用いて、運動機能などの行動解析を行うことを予定している。また、得られた結果については、適宜所属機関内外の研究者と議論を交わすとともに、学会における発表や専門誌への掲載を通じて、広く一般に発表する予定である。
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