2013 Fiscal Year Annual Research Report
NFBD1/MDC1抑制効果を応用したがん治療への分子機構解明と生物学的因子同定
Project/Area Number |
25893292
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
安藤 清宏 千葉県がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究室, 客員研究員 (10455389)
|
Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
Keywords | NFBD1 / MDC1 / PLK1 / TOPOIIalpha / decatenation checkpoint / ICRF-193 |
Research Abstract |
NFBD1/MDC1(Nuclear Factor with BRCT Domains 1/ Mediator of DNA damage Checkpoint 1、以下NFBD1)は、近年その発現または機能抑制によって抗がん剤や放射線に対する細胞の感受性が亢進することが判明したことから治療標的分子の候補と考えられているが、その分子機構には未解明の部分が多く臨床応用には至っていない。我々の前段階実験から、HeLa細胞におけるNFBD1のノックダウンは、分裂期キナーゼPLK1タンパクの早期発現上昇と分裂期の早期開始を引き起こすこと、またNFBD1はPLK1のリン酸化基質であることが見出されたことから、前年度はNFBD1 とPLK1との機能的相互作用の詳細を解析した。細胞周期を同調したHeLa 細胞の免疫沈降実験および免疫蛍光染色の結果では両者はG2/M移行期に細胞内で複合体形成および共局在することが判明した。これまでの報告によるとTOPOIIa(topoisomerase IIa)阻害剤であるICRF-193に誘導される細胞のdecatenation checkpointは、PLK1の活性化型変異体(T210D)を導入すると解除されることが知られているが(Luo et al. Nat Cell Biol, 2009)、本研究の機能解析の結果からPLK1によるNFBD1のThr847残基のリン酸化がNFBD1とTOPOIIaとの結合を阻害することによってDecatenation checkpointを阻害する可能性が示唆された。以上の結果より、PLK1によるNFBD1のリン酸化の機能的意義は、G2/M期のdecatanation checkpointを負に制御することによって未熟な分裂期の早期開始および染色体不安定性の蓄積と密接に関わる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、前段階実験から得られた結果よりNFBD1/MDC1とPLK1との機能的相互作用の分子機構の解明を目的に、以下の2つの項目の研究を行った。 (1) NFBD1/MDC1とPLK1の細胞内局在の解析 NFBD1/MDC1とPLK1の機能的相互作用の手がかりを探る目的に、細胞周期を同調したHeLa細胞を経時的に固定して、これまでに細胞周期を通じてダイナミックな局在変化をすることがよく知られているPLK1と、まだ細胞周期による局在変化が知られていないNFBD1/MDC1とを免疫蛍光染色で共染色した。その結果、両者の内在性タンパク質がG2/M移行期に共局在することが判明した。この結果より、両者の機能的相互作用の中心がG2/M移行期の分子機構の一部であることが推察することができたため、本項目の研究目的は達成したと考える。 (2) PLK1によるNFBD1/MDC1リン酸化の機能的意義 PLK1によるNFBD1/MDC1のリン酸化が、DNA2本鎖切断に及ぼす効果を検討する目的に非リン酸化置換体NFBD1/MDC1(T847A)およびリン酸化模倣型置換体(T847D)を作製してNFBD1/MDC1ノックダウン細胞に導入する機能相補実験を計画していたが、分子量の大きなNFBD1/MDC1の導入のための発現の安定したプラスミドを得ることが困難であったため、代わりにリン酸化標的ドメインであるPSTドメインの一部をコードする発現プラスミドをpseudo substrateとして利用した。その結果、間接的な結果ではあるが、内在性NFBD1のリン酸化の阻害はG2/M移行を抑制することが判明した。さらに、PLK1の活性化型変異体(T210D)を細胞に導入したところNFBD1/MDC1とTOPOIIαとの結合が阻害されたため、PLK1によるNFBD1/MDC1のリン酸化の機能的意義は、decatenation checkpointを解除する機構に関わる可能性が強く示唆された。以上の結果より本研究目的は概ね達成されたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に研究代表者らは、NFBD1/MDC1 (以下、NFBD1)の抑制はPLK1の発現上昇を誘導し、それよる未熟な分裂期開始がDNA損傷の蓄積を引き起こす可能性を報告した。(Ando et al. PLoS One 2013) これまでにPLK1はCHK1の機能を抑制することが知られており、NFBD1の機能抑制の分子機構とCHK1の機能抑制との関連が示唆される。そこで本年度は、NFBD1の機能抑制による抗がん剤感受性亢進効果の分子機構として、CHK1阻害剤処理によって誘導されることが近年判明したATM-PIDDosomeに依存したCASP2を介するアポトーシス経路 (Ando et al. Mol. Cell, 2012)を介するという仮説を立て、以下の2項目のアプローチで検証する。 1) NFBD1の発現抑制による抗がん剤感受性亢進効果とATM-PIDDosome 経路との関連を検討する目的に、HeLa 細胞由来のNFBD1ノックダウン細胞をレンチウイルスを用いたshRNA発現系を用いて作成する。この細胞にATM-PIDDosome経路の構成分子であるATM, PIDD, RAIDDまたはCASP2をsiRNAを導入し、抗がん剤剤感受性の亢進に及ぼす影響を検討する。同経路との関連性が示唆される結果が得られるならば、さらにATM-PIDDosome 経路の構成分子のノックアウトマウス由来の MEF を用いて、nfbd1siRNA が 抗がん剤感受性に及ぼす影響を検討する。また ATM, CHK1 または PLK1 の阻害剤を用いて抗がん剤感受性に及ぼす影響を検討する。 2) NFBD1の抑制による薬剤感受性亢進に必要不可欠な生物学的因子の同定する目的に、前年度までにCHK1 阻害剤に感受性の高いMYCN増幅神経芽腫細胞株を数種見出した。本年度は、これら細胞株を用いてCHK1阻害剤の処理前および処理後の遺伝子発現変化をcDNAマイクロアレイによって網羅的に解析し、CHK1阻害剤感受性に関わる候補分子を絞り込む。これら分子を標的としたsiRNAをNFBD1ノックダウン細胞に導入して抗がん剤感受性亢進に及ぼす影響を検討することで生物学的因子同定を目指す。
|
Research Products
(2 results)