2013 Fiscal Year Annual Research Report
SIV複製制御サル群を用いたエイズウイルス複製抑制維持に関わる因子の解明
Project/Area Number |
25893294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
野村 拓志 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (80711001)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 新規CTLエピトープ決定 / 複製制御維持機構解析 / 免疫動態解析 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
MHC-Iハプロタイプ90-120-Iaを共有するビルマ産アカゲザルはSIVmac239の感染に対してGag・Nef特異的CTL応答をドミナントに示す。本研究室で開発中のGag発現CTL誘導型予防エイズワクチンの接種により、MHC-Iハプロタイプ90-120-Ia共有アカゲザルの多くはSIVの複製を制御する。これまでにMHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに拘束されるCTLエピトープはGagに存在する3箇所のみが知られていたが、本研究では未同定であるMHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに拘束されるNefのCTLエピトープとしてNef9-19、Nef89-97およびNef193-203を新たに同定した。SIV非複製制御個体では、感染慢性期に当該エピトープに複数のアミノ酸置換が選択される。これらの変異を含む変異エピトープペプチドの多くはWTのエピトープペプチドに比較してCTL誘導能が劣る場合が多く、これらのアミノ酸置換はCTL逃避変異であることが示唆された。 2年間以上の長期にわたってSIV複製制御を果たした、MHC-Iハプロタイプ90-120-Iaを共有する複製制御個体のコホート群を用いてCTL応答を経時的に解析したところ、すべての個体がGagエピトープ特異的CTL応答を感染後4ヶ月から1年にかけて示したが、一部の個体では感染後2年で減衰する傾向が認められた。また多くの個体がNefエピトープ特異的CTL応答を示したが、一部の個体ではNefエピトープ特異的CTL応答が誘導されなかった。 このように長期間SIV複製制御個体におけるSIV特異的CTL応答の動態には差異が存在することが示唆され、複製制御の状態を反映するものであると考えられる。 当研究で得られた成果を踏まえて国内学会1件および国際学会1件で発表を行い、国内外の研究者らとSIV複製制御維持機構に関する情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究は概ね研究実施計画に沿って進捗した。MHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに拘束されるNefのCTLエピトープ決定に際しては、当研究室で保有しているSIV感染アカゲザルコホート群より、当該エピトープを含む領域にCTL応答を示している個体を見出し、凍結保存末梢血リンパ球を用いてオプティマルなエピトープペプチドを決定した。Nef89-97のエピトープについてはCTL応答を示す個体が少なかったため、現在も解析を続行中である。各エピトープ特異的なCTLクローンは当研究では必須な要素ではないため、現在のところクローンの作製は行っていない。MHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに拘束されるGag以外のエピトープに関してまとめた論文を現在投稿準備中である。 決定したMHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに拘束されるNefのエピトープ特異的なCTL応答に関して、平成25年度中に感染後2年の長期にわたり血中ウイルス量を検出限界未満に抑制した、11頭の複製抑制個体における経時的な解析を行った。本解析はコホート群の凍結保存末梢血リンパ球を用いており、遅滞なく行われた。
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Strategy for Future Research Activity |
アカゲザルの古典的MHC-I遺伝子は複数のMamu-AおよびMamu-B遺伝子で構成されている。MHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに拘束されるNefのCTLエピトープに関してより詳細な解析を行い、MHC-Iハプロタイプ90-120-Iaに属するいずれのMamu遺伝子に拘束されるか検討する。GagのCTLエピトープを拘束するMamu遺伝子は既に所属研究室が報告している。同一のMamu遺伝子に拘束されるエピトープが複数存在した場合、SIV感染個体におけるこれらのエピトープのCTL逃避変異選択の差異を解析する。 SIV複製制御個体におけるCTL逃避変異選択の時期と、その後の病態進行または複製抑制維持との関連の解明は本研究の主要な課題である。複製抑制個体の凍結保存末梢血リンパ球由来のCD4陽性T細胞中のプロウイルスゲノムについてnef配列の解析を行い、NefのCTLエピトープ逃避変異の選択と蓄積を評価し、各CTLエピトープ間での変異蓄積の差異の考察を行う。さらにgagプロウイルスゲノム配列の感染後8週の早期、感染後1年、感染後2年において解析を行い、GagのCTLエピトープ逃避変異の蓄積の進行時相との比較を行う。 平成25年度の研究では複製抑制個体におけるNefとGagエピトープ特異的CTL応答の誘導パターンについて、それぞれがSIV感染後に現出/消退する時相の解析を行った。平成26年度の研究で得られる知見を加え、複製抑制個体内に存在するプロウイルスゲノム性状と宿主のCTL応答の誘導機序の関連を考察し、CTL応答によるエイズウイルスの複製抑制維持に関わる因子について議論する。
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