2013 Fiscal Year Annual Research Report
凝固因子の新しい受容体による凝固・血栓形成機構の解明
Project/Area Number |
25893300
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
藤田 佳子 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (30416218)
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Project Period (FY) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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Keywords | 血管 / 血液 |
Research Abstract |
本研究は血液凝固系の新しい活性化機構を解明することを目的としている。近年、ワルファリンに加え、新たにトロンビン阻害薬、第Xa因子阻害剤が使用されるようになり、経口抗凝固薬治療も新しい段階を迎えた。しかし、これらは血液凝固系の古い知見から生まれたものであり、依然として出血の副作用の危険をはらんでいる。本研究により30年間新しい因子の発見がなかった凝固系カスケードに新しい因子を加えることで、これが新たな治療標的となり、より効果的で副作用の少ない抗凝固薬開発の一助となる可能性がある。 平成25年度までの研究で、既知の血液凝固因子(凝固因子A)が新規受容体Bと結合し、血液凝固を促進することがわかってきた。新規受容体Bによる凝固時間の短縮は、新規受容体B中和抗体によって抑制された。凝固因子A欠損血漿は、新規受容体Bに結合した凝固因子Aをリクルートすることによって凝固促進効果を発揮した。また血液凝固試験だけでなく、凝固カスケードの最終産物であるトロンビン生成の促進について、トロンビン基質を用いて明らかにした。正常血漿に新規受容体Bを加えることよって加速したトロンビン生成、活性化の亢進は、新規受容体B中和抗体によって抑制された。また、血漿を用いた試験だけでなく、蛋白と基質を用いた再構成系によっても凝固因子Aと新規受容体Bによるトロンビン活性化亢進が起こることを明らかにした。 引き続き、平成26年度も凝固因子Aと新規受容体の相互作用から、どのように血栓塞栓症の発症・進展に関わっているのかを明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内に以下の3つの点を明らかにすることを目標としており、計画通り平成25年度は1)と2)を中心に研究を進めることができた。 1)凝固因子Aと新規受容体Bによる凝固促進の作用点を明らかにする。 2)凝固因子Aがつくる複合体における、凝固因子Aと新規受容体Bとの関係を明らかにする。 3)凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用が、生体内で血栓形成を時空間的に制御しているか明らかにする。 1)については、凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用による凝固促進効果は、凝固因子Aの欠損血漿を用いた実験を行うことによって明らかになってきた。凝固因子Aが関与している凝固作用に新規受容体Bも関与することがわかってきた。凝固因子Aと新規受容体Bによる凝固促進効果は、新規受容体の中和抗体、凝固因子Aの分解酵素を作用させることによって抑制された。凝固を示す指標として、血漿の凝固観察だけでなく、凝固の最終産物であるトロンビンの活性を発色基質にて経時的に測定した。それによっても、凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用が凝固を促進させていることが明らかになった。 2)については、蛋白と酵素による再構成系での実験手法を用いて進めている。凝固因子Aが作用を発揮する際、複合体を形成することがわかっている。そのいくつかの複合体因子を用いて再構成系での実験系を立ち上げた。その系においても凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用によるトロンビン活性化の亢進を検出することができた。新規受容体Bはこの複合体を阻害することなく、協調的に働きかけている可能性があることがわかってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究は、平成25年度に明らかになってきたin vitroでの実験を、より生態に近い条件を想定し、細胞を用いた実験系へと移行させる。凝固因子Aは活性化型になる前に、血中に多く存在するが、新規受容体Bは内皮細胞に存在することがわかっており、正常ではほとんどその発現は見られず、炎症やリガンドによる刺激によりその発現が亢進することがわかっている。このことから、凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用による凝固亢進作用は新規受容体Bに大きく依存することが予想される。その点に着目し、より詳細なメカニズムが明らかになるよう実験を組み立てる。 主には、当初の計画通り、研究期間内に明らかにすることのうち3)とした「凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用が、生体内で血栓形成を時空間的に制御しているか明らかにする」について進めていく。血液凝固反応は血漿だけでも起こり得るものであるが、in vivoにて内皮細胞に発現した新規受容体Bが、凝固因子Aの受容体として働いて凝固、血栓形成を制御している可能性がある。生体内で、凝固因子Aと新規受容体Bによる相互作用が起こりやすい状況を想定し、in vivoでの意義を探る。新規受容体B遺伝子ノックアウトマウスを用い、生体内での凝固因子Aと新規受容体Bの相互作用による凝固系活性化の重要性を明らかにする。そのために、WTマウス、新規受容体B遺伝子欠損マウスを用い血栓症モデルを作成し、新規受容体Bの発現レベルを調べ、血栓形成、血小板集積部位との関連性を共焦点顕微鏡にて生体内蛍光観察による解析を進めたい。
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[Journal Article] LOX-1 ligands containing apolipoprotein B and carotid intima-media thickness in middle-aged community-dwelling US Caucasian and Japanese men.2013
Author(s)
Okamura T, Sekikawa A, Sawamura T, Kadowaki T, Barinas-Mitchell E, Mackey RH, Kadota A, Evans RW, Edmundowicz D, Higashiyama A, Nakamura Y, Abbott RD, Miura K, Fujiyoshi A, Fujita Y, Murakami Y, Miyamatsu N, Kakino A, Maegawa H, Murata K, Horie M, Mitsunami K, Kashiwagi A, Kuller LH, Ueshima H
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Journal Title
Atherosclerosis
Volume: 229
Pages: 240-245
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Lectin-like oxidized low-density lipoprotein receptor-1 plays an important role in vascular inflammation in current smokers.2013
Author(s)
Takanabe-Mori R, Ono K, Wada H, Takaya T, Ura S, Yamakage H, Satoh-Asahara N, Shimatsu A, Takahashi Y, Fujita M, Fujita Y, Sawamura T, Hasegawa K.
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Journal Title
J Atheroscler Thromb.
Volume: 20
Pages: 585-590
DOI
Peer Reviewed