2013 Fiscal Year Annual Research Report
抑肝散投与による偽アルドステロン症発症に利尿薬の併用が及ぼす影響
Project/Area Number |
25929028
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
嶋田 沙織 筑波大学, 附属病院薬剤部, 薬剤師
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 抑肝散 / 偽アルドステロン症 / 利尿薬 |
Research Abstract |
研究目的 : 甘草を含有する漢方薬では、グリチルリチンの副作用である偽アルドステロン症が問題となる。低カリウム(K)血症と高血圧を主症状とする本副作用は、甘草含有量が2.5g/日以上の漢方薬で発症頻度が高まる。認知症患者の周辺症状改善を目的として使用される抑肝散は、甘草含有量が少ないため(1.5g/日)、偽アルドステロン症の発症頻度は低いと考えられているが、過去の報告での低K血症の発症頻度は決して低くはない。甘草含有量が少ないにも関わらず抑肝散投与による低K血症発症頻度が高い理由を明らかにするために、抑肝散投与患者の低K血症の発症頻度や発症要因を調査した。また、利尿薬が抑肝散投与患者の血清K値に及ぼす影響を検討するために、抑肝散と利尿薬の併用実態を調査した。 方法 : 抑肝散投与患者を対象に、低K血症の発症頻度及び利尿薬を含む低K血症誘発薬剤(グルココルチコイド、ループ・サイアザイド系利尿薬、甘草含有漢方薬)の併用を調査した。 研究成果 : 抑肝散投与患者209名を調査したところ、55名(26.3%)では抑肝散投与開始26日(1-1576日)後に低K血症を認めた。低K血症の発症要因についてロジスティック回帰分析を行ったところ、低K血症誘発薬剤併用患者では非併用患者に比べ、本症の発症率が2.8倍に高まることが明らかとなった。 また、抑肝散と利尿薬(ループ利尿薬 : L、サイアザイド系利尿薬 : T、抗アルドステロン薬 : AA)を併用した患者24名を調査したところ、9名(37.5%)では併用中に低K血症を認めており、いずれもL/Tを併用していた。L/Tと抑肝散の併用開始14日後に低K血症を認めたことから、この時期の血清K値の測定が抑肝散による偽アルドステロン症の早期発見に有用と考えられた。抑肝散とAAの併用時には低K血症を認めなかったことから、AAが抑肝散による低K血症の発症を抑制した可能性が考えられた。
|