Research Abstract |
未来を担う中学生に, ips細胞など世界が注目する最先端科学の可能性や重要性を伝えるだけではなく, 身近な細胞の営みの不思議さを実感させる学習を通して, これからの社会の未解決課題についても積極的に立ち向かえるような, 「科学の芽」を持った生徒を育成したいと考え研究を行った。 本研究では「身近な素材を用いた観察・実験を通して, 視点の明確化を促し, 結果を実感として捉えさせ, 考察させることができれば, 未解決課題に対する科学的な思考力・判断力・表現力を育成できるであろう」という研究仮説を立て, ひとつの細胞分裂の特徴に着目させ, 中学校段階で, 生命現象に関する科学的思考力・判断力・表現力を高めさせるような新たな教材や教具, 授業展開について開発した。 次の(1)~(3)の内容について具体的に研究を進めた。(1)タマネギ根の「体細胞分裂」観察, カエル受精卵の「卵割」の観察についての授業実践, (2)思考力・判断力・表現力を高める具体策として①「高精細細胞ヴァーチャルスライド」の作成と活用・②「医学的教育資源」を活用した細胞に関連する教材・教具の開発, (3)授業実践後, 分析と成果と課題を実施した。 研究成果として, 明瞭な観察・実験結果を生徒自身が実感として得ることで, 考察につながる思考活動がスムーズに展開できる実例が見えてきたことから, 生徒に実体験として行わせる顕微鏡観察と, 今回新たに開発したヴァーチャルスライドを併用する観察方法が効果的であることが分かった。また, 少しでも興味を持った生徒が, 家庭においても繰り返し主体的に観察できる環境を築けたことは, 「科学の芽」を育てる上で重要な役割を果たせた。 本研究を通して, 学習指導要領に沿った身近な植物・動物細胞だけでなく, 最先端科学で扱われているips細胞をはじめとして, 幅広い画像データベースを作成・保有し, ヴァーチャルスライドと併せて常に鮮明な画像を活用できる学習環境を整えることができた。
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