2017 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少社会における、経済の外的ショックを踏まえた持続的発展社会に関する分析
Project/Area Number |
26000001
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
馬奈木 俊介 九州大学, 工学研究院, 教授
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Project Period (FY) |
2014 – 2018
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Keywords | 持続可能性指標 / 包括的資本 / シャドウ価格 / 便益移転 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、震災等の外的ショックや、人口減少という今日的課題を念頭に、新しい時代文脈における持続可能な発展の経済学的ビジョンを提示することである。本研究のもたらす貢献は、第一に、世界、国、国内の地域という様々な空間軸で持続可能性を理論づけ、包括的資本とシャドウ価格のデータを整備する、第二に、各国の持続可能性指標に関して世界で最も広範囲なデータベースを構築する、第三に、全国・世界的規模の住民意識に関する調査から包括的富と幸福度を統合したデータベースを開発する、第四に、東日本大震災の前後のデータセットによって、災害時の復旧の度合いや今後の持続可能性を測定可能とすることである。 これらの研究成果は、論文として査読付き国際・国内学術雑誌に多数掲載し、また書籍も学術的に知名度の高い国際・国内の出版社から出版している。分野も、特別推進研究で研究対象としている環境経済・環境政策・環境行動・資源・エネルギー・災害・生物多様性・持続可能性など多岐にわたる。代表・分担者及び特任講師・助教・学術研究員は、定評のある国内・国際主要学会にて発表を行っている。 以下は、これら貢献の詳細である。まず、本研究が対象とする人口減少下における持続可能な発展論の経済学的研究のため、人工資本・人的資本・自然資本を統合し算出した、持続可能な発展の指標である新国富指標(包括的富、IWI)について、日本国内・世界にて、都道府県、政令指定都市、市区町村レベルでの調査を行い、新国富指標の計算を終えた。特に、構築された国内データを用いて、福岡県糟屋郡久山町、熊本県水俣市、福井県などの地域と協力して、これらの地域での政策決定に生かせるよう働きかけ、久山町では実際に予算配分を決定する際の指標とした。宮城県と福島県では、東日本大震災によるIWIの変化を測定し、震災等の外的ショックが持続可能性にもたらした影響を議論した。政策ツールとして、IWIやグリーンNNPの額・成長率にリンクする債券を思考実験として提案した。さらに、各国の制度がIWIに与える影響を分析した。また将来人口を含めた一人当たりで見た動学的平均功利主義IWIと通常の一人当たりIWIを理論・実証的に比較分析し、持続可能性分析に与える影響を考察した。市区町村レベルだけでなく、中国におけるさらに詳しい新国富指標のデータ構築のため、30メートル四方でのメッシュデータを作成し、中国全土における新国富指標の変化を詳細に分析することに成功した。 成果として、国連報告書(Inclusive Wealth Report 2018)を代表として執筆した。また、Natureをはじめとする高いインパクトファクターの雑誌に論文を出版した。42か国国際アンケートの分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
持続可能性を判断するための指標の1つである、新国富(包括的富、IWI)については、世界各国の資本の推計が完了し、日本国内についても市町村レベルの推計が完了した。査読付き学術論文として発表されただけでなく、日本経済新聞の経済教室を始めとしたメディアでも取り上げられた。現実の問題解決のために利用することが出来る実務的な指標を目指し、新国富指標を実際の政策に生かす取り組みも順調に進んでいる。具体的には、雪害に遭った福井県、福岡県久山町、熊本県水俣市において、新国富指標の推計値を各自治体にフィードバックし、政策に貢献した。福井県では、県民にアンケートを実施し、既存の統計で測れない生活や気持ちを豊かにする要素を加味した指標の発表を県庁職員80人を対象に行い、福井新聞において報道もされた。久山町においては、新国富指標を基にした予算編成を行い、全国初の試みとして西日本新聞、朝日新聞で大きく報道された。 他には、災害や土地利用変化の分析のために、30mメッシュ単位での国内総生産(GDP)の推計も行っており、すでに中国全土における推計を終え、日本国内の推計を順調に進めている。また、外的要因(気候変動政策)が持続可能性に与える影響についても、シナリオ分析による新国富の変化の推計をし、分析を終えた。また、すでに完了した主観的福祉指標を構築するための国際調査のデータを利用して、大気汚染が幸福度に与える影響を調べるための計量モデルの構築も行った。こうした研究は、査読付き学術論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
特別推進研究の最終年度である本年度では、これまで理論面・実証面において研究を行ってきた新国富(包括的富、IWI)指標の実務レベルでの有用性を高め、普及させることを目指す。地方自治体が人口減少下社会における持続可能な発展に向けた、より精度の高い政策の意思決定が行えるよう、これまで中国を事例として行ってきた30メートル四方でのメッシュデータの作成を日本においても行い、IWI指標の計算を行う。同時に、IWI指標の重要な構成要素の一つである社会資本に関して、人口減少・高齢化社会における過疎地域でのその維持を考えるため、日本全国のインフラストラクチャーの価値の推計も行う。また、新国富指標の運用を発展途上国の開発計画にも反映させることも目指し、30メートル四方でのメッシュデータを用いたIWI指標やGDP等の指標の計算を発展途上国に対しても行う。 国際調査のデータなどを用いて、主観的福祉指標の構築も行う。その一つとして、消費量だけでなく多様な価値(Beyond GDP)を考慮した効用関数の検討、すなわち、消費量を減少させたとしても幸福度を低下させないよう、現在消費として分類されているGDPに計上される要素だけでなく、レジャー、寿命、エネルギー、環境価値といった価値を含めた効用関数の検討を行う。また、幸福度を効用の代理変数ではなく、効用を構成する一要素として捉える効用関数の検討も行う。こういった主観的福祉指標の枠組みを発展途上国の最貧困層にも適用するため、インド・ムンバイのスラム街の分析も行う。 42カ国の国際アンケートと土地利用メッシュデータから、各国毎の今日的課題に対して優れた政策提案を行う。これらの結果をもとに、経済学、政治学、社会学、都市工学のトップジャーナルに投稿していく。また、国連報告書として、Inclusive Wealth for Japan(福島などの政策課題)、Inclusive Wealth for China、Inclusive Wealth for Indiaなどを連続して出版する。
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Research Products
(94 results)
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[Journal Article] Stormwater Reuse, A Viable Option : Fact or Fiction?2017
Author(s)
Goonetilleke A., A. Liu, S. Managi, C. Wilson, T. Gardner, E. R. Bandala, L. Walker, J. Holden, M. A. Wibowo, S. Suripin, H. Joshi, D. M. Bonotto, and D. Rajapaksa
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Journal Title
Economic Analysis and Policy
Volume: 56
Pages: 14-17
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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