2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26000003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中畑 雅行 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70192672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小汐 由介 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80292960)
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Project Period (FY) |
2014 – 2018
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Keywords | ニュートリノ / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではスーパーカミオカンデ(SK)の50000トンタンクにガドリニウムを溶解し中性子を捉える機能を付加させ、反電子ニュートリノを使った超新星ニュートリノ観測を目指す。超新星爆発は宇宙の初めから宇宙のいたるところで起きてきており、それらからの蓄積されたニュートリノを観測することが本研究の主目的である。また、我々の銀河系で超新星爆発が起きれば反電子ニュートリノと陽子の反応事象と電子散乱事象とを区別することにより、超新星の方向決定精度も向上させることができる。本年度は、(1)硫酸ガドリニウムを溶解する装置(具体的には、SKからの戻り水の一部を分岐しその水を使って溶解する、そして溶解後の高濃度溶液をSKからの戻り水と合流させ既定の濃度の硫酸ガドリニウム溶液を作る)の仕様決定および詳細設計、(2)硫酸ガドリニウム水を純化する装置(具体的には、溶解後に溶液中に存在する未溶解粉末や水の透過率を悪くする不純物、観測のバックグラウンドとなる放射性物質を取り除くための装置)の具体的な設計、(3)SKタンクの水漏れを止めるための止水材料の溶出試験、止水能力試験、ラドン放出率の評価をおこなった。(1)においては業者において硫酸ガドリニウムの溶解速度を測定し、必要とされる溶解時間、一回のバッチあたりに溶解する量を決め、装置の詳細仕様を決定した。(2)については今まで行ってきた試験装置での経験をもとに必要とされる樹脂の量、各純化機器の規模、台数等を決定した。(3)については市販されているいろいろな水漏れ材料を調べたが、すべての条件を満たす材料はみつからず、新たに材料を作ることになった。種々の試験の結果、微小粒径の酸化ケイ素をポリウレア樹脂に混ぜることによって低ラドン放出率であり、水に対する溶出物も少なく、かつ十分な止水能力をもつ材料を開発できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究をおこなうためには、ガドリニウム(Gd)水循環装置、Gd溶解装置、Gd純化装置を導入する必要がある。当初の予定では仕様が決定しているGd水循環装置を先に導入し、後にGd溶解装置、Gd純化装置を導入する予定であった。しかし、設置場所において装置を搬入する経路と将来多量の硫酸ガドリニウムを搬入するための経路との位置関係から、Gd溶解装置、Gd純化装置を先に導入する必要が生じた。そこで、本年度は急きょ、溶解装置の仕様を決定するために硫酸ガドリニウムの溶解速度の測定をおこない、それをもとに溶解用タンクのサイズ、流量、溶解サイクル時間などを決定した。それに時間を要してしまい、実際に仕様書ができたのが平成28年2月になってしまった。平成27年度の科研費は繰り越して平成28年度にこれらの装置の購入・設置を行う予定である。また、GdをSKタンクに溶解するに先立ち、タンクの水漏れを補修する必要がある。そのための止水材料はGd水に溶出物を出さないこと、止水能力を有すること、ラドンを放出しないことといった条件を満たす必要があり、その材料の選定を平成27年度に終える予定であった。すべての条件を満たすと考えられる材料を開発することができたが、最終選定材料での止水能力の確認、材料の量産性の確認は年度内に終わらすことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に仕様書を作成したGd溶解装置、Gd純化装置を平成28年度4月に入札を行い業者を決定する。その後、平成28年末ごろまでに装置を設置する。Gd水循環装置は仕様はすでに固まっているので、平成28年度早々に仕様書を作成し入札をおこなう。Gd水循環装置の導入は平成29年3月までに行う予定であり、その時点でGd水用の装置は当初の予定に戻ることになる。Gdを導入する前にSKタンクの水を抜いて水漏れ補修を行わないといけないが、その期間、T2K実験(東海村からニュートリノを飛ばしてSKで受ける加速器ニュートリノ実験)をストップする必要がある。T2K実験は世界の他の実験と競い合っている状況であり、タンク補修による影響を最小限にとどめる必要がある。SKグループとT2Kグループとは平成27年度に以下の共同声明を作った。 On June 27, 2015, the Super-Kamiokande collaboration approved the SK-Gd project which will enhance neutrino detectability by dissolving gadolinium in the Super-K water. T2K and SK will jointly developa protocol to make the decision about when to trigger the SK-Gd project, taking into account the needs of both experiments, including preparation for the refurbishment of the SK tank and readiness of the SK-Gd project, and the T2K schedule including the J-PARC MR power upgrade. Given the currently anticipated schedules, the expected time of the refurbishment is 2018. このようにJ-PARCビーム増強を目的とする電源増強等の要因によりSKタンク水漏れ補修は2018年になる公算が高い。本研究は水漏れ補修後なるべく早く研究を進められるよう他の部分の準備を入念に進めていく。
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[Presentation] SK-upgrade2015
Author(s)
M. Ikeda
Organizer
Nu workshop@J-PARC
Place of Presentation
J-PARC, Japan
Year and Date
2015-08-04 – 2015-08-06
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