2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26000003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中畑 雅行 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (70192672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小汐 由介 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80292960)
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Project Period (FY) |
2014 – 2018
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Keywords | ニュートリノ / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
50000トンの容積を持つスーパーカミオカンデ(SK)の純水にガドリニウムを溶解することにより、中性子捕獲によるガンマ線を捉えることができるようになり、反電子ニュートリノによる逆ベータ崩壊反応をバックグランドと区別して捉えることができるようになる。それによる主たる物理のアウトプットは超新星背景ニュートリノの観測である。超新星背景ニュートリノとは宇宙の初めから宇宙のいたるところで起きてきた超新星爆発からのニュートリノの蓄積であり、それを捉えることができれば宇宙の物質生成の歴史を探ることができる。本年度は、(1)硫酸ガドリニウムを溶解する装置の建設、(2)溶解後の硫酸ガドリニウム水溶液を前処理し、溶け込んでいるウラン系列、トリウム系列の放射性不純物や透過率を悪くする有機系不純物を取り除く装置の建設、(3)(2)で処理した硫酸ガドリニウム水をSKからの戻り水と合流させ、その後放射性、有機系不純物を取り除く循環装置の建設、(4)SKタンクの水漏れ箇所の調査、(5)SKタンクの水漏れを止めるための止水材料についてピンホール処理用の材料(Bio-Seal-197)と伸縮性に富む材料(MineGuard-C)との統合試験を行い最終的な止水方法の検討、を行った。(1)から(3)まではこの研究の最も主要な装置の建設であったが、順調に建設が進み、坑内の実験室Gにすべての機器が設置された。(4)の調査の結果、主たる漏れ箇所はタンクの底面にあることが分かり、その結果を踏まえて(5)では側面の溶接線についてはMineGuard-Cを塗り、底面においてはいったんBio-Seal-197を塗りその上からMineGuard-Cを塗ることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、平成27年度に硫酸ガドリニウム水の前処理装置と循環装置を建設し、平成28年度に硫酸ガドリニウムの溶解装置を導入する予定であったが、設置場所における装置搬入経路と将来多量の硫酸ガドリニウムを搬入するための経路との位置関係から、溶解装置と前処理装置を先に導入する必要が生じた。そのため、平成27年度に溶解装置の仕様を決定するための溶解速度の測定を行い、溶解用タンクのサイズ、流量、溶解サイクル時間などを決定した。溶解装置/前処理装置は平成28年3月4日に入札公告を出し、4月4日に開札され、オルガノ(株)が建設することとなった。設置は順調に進み、平成29年3月24日に導入が完了した。また、硫酸ガドリニウム水の循環装置については平成28年度の経費のもとで6月23日入札公告、7月11日開札で業者がオルガノ(株)に決定し、こちらも平成29年3月24日に導入が完了した。したがって、現時点では硫酸ガドリニウム水を処理する装置関係はおおむね順調に進展していると評価できる。しかし、SKタンクを開けて水漏れを補修するための工事は、本研究の申請時は平成28年度までに行うことを想定していたが、「12. 今後の研究の推進方策等」に記すように平成30年度以降になる見込みである。以上を総合的に判断して、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSKタンクの水を抜いて水漏れ補修をおこない、その後に硫酸ガドリニウムを溶かして観測開始となる。水漏れ補修をいつ行うかについては、SKを使って現在進行しているT2K実験(東海-to-神岡長期線ニュートリノ実験)と協議しながら進めていく必要がある。SK実験グループとT2K実験グループとは平成27年度に以下の共同声明を作った。 On June 27, 2015, the Super-Kamiokande collaboration approved the SK-Gd project which will enhance neutrino detectability by dissolving gadolinium in the Super-K water. T2K and SK will jointly develop a protocol to make the decision about when to trigger the SK-Gd project, taking into account the needs of both experiments, including preparation for the refurbishment of the SK tank and readiness of the SK-Gd project, and the T2K schedule including the J-PARC MR power upgrade. Given the currently anticipated schedules, the expected time of the refurbishment is 2018. ここにはJ-PARC MR power supplyのupgradeが2018年(平成30年)に予想されると書かれているが、平成29年度のpower supply予算が認められなかったため、現時点ではpower supplyのupgradeが、「早くても平成31年」となっている。そのため平成30年度には6か月のT2K実験のビーム照射期間が予想されるが、SKタンクの水漏れ補修のためには約4か月の工事期間、2か月半の給水期間、そして約2か月の純水循環期間(純水の透過率が元通りになるまでの期間)が必要であり、この予定のままでは全部で8か月半かかってしまい、T2K実験のスケジュールと合わなくなってしまう。そこで、純水循環期間をなくすことができないか現在検討を進めている。具体的には、給水期間にタンク内の水を汲み上げて循環させることによって給水完了までに透過率をもとの状態に戻すという方法である。平成30年にタンクの水漏れ補修が終われば、平成31年に硫酸ガドリニウムを溶かして観測を開始することになる。そこで、本特別推進は平成31年度まで1年延長してしていただけるようお願いしたい。
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[Presentation] Neutrino experiments at Kamioka2017
Author(s)
M. Nakahata
Organizer
The 3rd Toyama International Workshop on "Higgs as a Probe of New Physics 2017"
Place of Presentation
Gofuku Campus of the University of Toyama (Toyama city, Toyama, Japan)
Year and Date
2017-03-01 – 2017-03-05
Int'l Joint Research / Invited
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