2015 Fiscal Year Annual Research Report
超高圧力下の新物質科学 : メガバールケミストリーの開拓
Project/Area Number |
26000006
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 克哉 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70283736)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 岳洋 岐阜大学, 工学部, 助教 (10403122)
|
Project Period (FY) |
2014 – 2018
|
Keywords | 高圧力 / 超伝導材料・素子 / 金属物理 / 磁性 / 軽元素 / 高温超伝導 / 金属水素 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
項目A「水素をはじめとしたシンプルなシステムの超高圧物性」 ①流体水素 : 高温高圧下金属流体水素相を伝導測定から直接的に捉えたデータを得ることに成功した。 ②硫化水素 : 硫化水素の200Kを超える高温超伝導相の結晶構造を世界で初めて明らかにした。 ③金属水素化物 : 白金水素化物の生成と高圧下電気抵抗測定に成功し7Kに超伝導転移を示唆するデータを得た。 ④臭素 : 臭素が分子相から単原子相への転移においてヨウ素同様に非整合変調構造をもつことを明らかにした。 ⑤アルカリ土類金属 : ストロンチウムとバリウムに、ホストーゲスト構造の高圧相の存在を明らかにした。 ⑥第一原理計算 : 遺伝的アルゴリズムを使って新たな硫黄水素化物(H_5S_2)を予測した。 項目B「超高圧合成による機能性物質のフロンティア」 ①熱電材料 : 熱電材料のマンガン-シリコン二元系合金に高圧下で超伝導を示唆する電気抵抗の減少を観測した。 項目C「革新的な高圧実験技術および理論計算手法の開拓」 ①流体水素抵抗 : 水素の安定した封止と加熱を行うための高圧技術を確立した。 ②高度化 : SPring-8・BL10XUにおいて、フラットパネル二次元検出器を導入し、時間発展の観測を実現した。 ③計算手法 : フォノン計算コードを完成させ、フォノンの非調和効果を取り入れた計算を可能にした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度においても、設定した研究項目(A, B, C)それぞれにおいて設定している小項目に基づいて研究を推進した。上記の概要のとおりに、ほぼ全ての小項目において計画どおりに進展している。 昨年度に引き続き、大きく進展した研究として硫化水素(H2S)を出発物質とした超伝導の研究成果と水素化物の生成と超伝導が挙げられる。前者は、昨年度当初から世界的に非常に注目されており、再現実験を通じて、超伝導がいわゆる「本物なのか」どうか、そして、この高温超伝導を発言している物質が「何なのか」をいち早く明らかにすることに成功した。そもそもこの高温超伝導が研究協力者であるEremetsの発見であり、また構造探査の実験を連携協力者の大石氏のSPring-8で実施できるといって、本研究を通じた協力体制がすでに構築できていたことが、この成果につながったといえる。後者も本研究が目指すメガバールにおける新物質創成において、超高圧下でしか生成できない超伝導物質を世界ではじめて得た画期的な成果と考えられる。以上のことから、当初の計画以上に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
項目A「水素をはじめとしたシンプルなシステムの超高圧物性」 ・硫化水素類似物質 : 硫化水素を超える高い超伝導転移温度を目指して、水素一硫黄系の組成比及び構成元素を変え、更に高圧下で赤外レーザー加熱などの手法を用い、新奇超伝導体の作製・物性評価を行う。 ・固体水素 : 水素封止技術は確立させたが、超高圧に耐えうる電気抵抗測定用の電極の改良が必要である。そのためにまず、試料室周辺の構成を収縮しにくい立方晶窒化ホウ素と水素を封止できる硫酸カルシウムを組み合わせた複合ガスケットを開発する。そして超高圧下におけるガスケットの変形に耐えうる蒸着電極を作製する。 ・単体元素 : アルカリ土類金属元素では、ホストーゲスト高圧相よりもさらに高圧側において、さらに高温の超伝導相の探索を行う。ハロゲン族元素では、既に超伝導が観測されている臭素・ヨウ素に加えて、より軽元素である塩素またはフッ素の金属化・超伝導発現を目指し、これらの活性な元素に耐えうるガスケット材等を開発する。 ・金属水素化物 : 白金水素化物の超伝導転移の確証を得るため、高圧下交流磁化率測定によるマイスナー効果の観測を行う。また、このためにダイヤモンドアンビルセル用交流磁化率測定装置を構築する。パラジウム水素化物の超伝導転移温度の圧力依存性を、超伝導転移が消失する圧力まで観測する。合わせて同様の実験を重水素化物について行うことで、この物質の超伝導発現機構について知見を得る。 項目C「革新的な高圧実験技術および理論計算手法の開拓」 ・放射光高度化 : 微小領域X線回折実験のための、X線集光素子の高度化を行う。従来はビームの垂直及び水平方向にそれぞれ一次元集光による擬似二次元集光を行っていたが、新規に交差配列型レンズを導入して組み合わせ、より完全に近い二次元集光を実現する。これによりビーム形状が向上して強度も増加し、より高精度で高速なピンポイント解析が可能となる。なお、従来レンズの使用も継続するが、X線照射劣化に対する交換も実施する。 ・計算手法 : 遺伝的アルゴリズムを軽元素水素化物に適用させて、新規高温超伝導物質の探索を行う。水素化物ではフォノンの非調和効果が大きいため、開発した確率的自己無撞着調和近似法によるフォノン計算コードを使って結晶構造安定性・超伝導性の精密予測を行う。これらの計算コードの改良や最適化を同時進行で行う。
|
-
-
[Journal Article] Pressure-Induced Valence Transition and Heavy Fermion State in Eu_2Ni_3Ge_5 and EuRhSi_32015
Author(s)
Ai Nakamura, Tomoya Okazaki, Miho Nakashima, Yasushi Amako, Kazuyuki Matsubayashi, Yoshiya Uwatoko, Shuei Kayama, Tomoko Kagayama, Katsuya Shimizu, Taro Uejo, Hiromu Akamine, Masato Hedo, Takao Nakama, Yoshichika Onuki, and Hiroyuki Shiba
-
Journal Title
Journal of the Physical Society of Japan
Volume: 84
Pages: 053701-1,053701-4
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Correlation between intercalated magnetic layers and superconductivity in pressurized EuFe_2(As_<0.81>P_<0.19>)_22015
Author(s)
A. P. Drozdov, M. I. Eremets, I. A. Troyan, V. Ksenofontov and S. I. ShyliJing Guo, Qi Wu, Ji Feng, Genfu Chen, Tomoko Kagayama, Chao Zhang, Wei Yi, Yanchun Li, XiaoDong Li, Jing Liu, Zheng Jiang, Xiangjun Wei, Yuying Huang, Katsuya Shimizhu, LiLing Sun and Zhongxian Zhao
-
Journal Title
Europhysics Letters
Volume: 111
Pages: 57007-p1,57007-p5
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Superconductivity of Compressed Hydrogen Sulfide Systems2016
Author(s)
K. Shimizu, M. Einaga, M. Sakata, H. Nakao, M. Eremets, A. Drozdov, U. Troyan, N. Hirao, and Y. Ohishi
Organizer
Workshop on Computational Nano-Materials Design and Realization for Energy-Saving and Energy-Creation Materials
Place of Presentation
Osaka University (Tonoyana, Osaka)
Year and Date
2016-03-25 – 2016-03-26
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] X線吸収分光・NMR測定による近藤半導体SmB_6の高圧下電子状態2016
Author(s)
江見直哉, 小山岳秀, 西山功兵, 上田光一, 水戸毅, 水牧仁一朗, 河村直己, 石松直樹, 北川健太郎, 加賀山朋子, H. Nguyen, 清水克哉, 伊賀文俊, N. Shitsevalova
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学 泉キャンパス(宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
[Presentation] 硫化水素の高温超伝導相の結晶構造2016
Author(s)
榮永茉利, 中尾敏臣, 坂田雅文, 石河孝洋, 清水克哉, A. P. Drozdov, M. I. Eremets, I. A. Troyan, 大石泰生, 平尾直久
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学 泉キャンパス(宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
-
-
-
-
[Presentation] YbNiO_3の圧力下におけるX線結晶構造解析2016
Author(s)
永澤延元, 池田修悟, 平尾直久, 大石泰生, J. A. Alonso, M. J. Martinez-Lope, M. M. Abd-Elmeguid, 小林寿夫
Organizer
日本物理学会第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学 泉キャンパス(宮城県仙台市)
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 硫化水素の高温超伝導相の結晶構造2015
Author(s)
榮永 茉利, 中尾 敏臣, 坂田 雅文, 清水 克哉, DROZDOV Alexander, EREMETS Mikhail, TROYAN Ivan, 大石 泰生, 平尾 直久
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 硫化水素の加圧による高温超伝導発現2015
Author(s)
清水 克哉, 坂田 雅文, 榮永 茉利, 中尾 敏臣, EREMETS Mikhail, DROZDOV Alexander, TROYAN Ivan, 大石 泰生, 平尾 直久
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 新奇リチウム水素化物(LiH_x)の超高圧下物性2015
Author(s)
久野 敬司, 松岡 岳洋, 中河 貴也, 太田 健二, 中本 有紀, 平尾 直久, 大石 泰生, 坂田 雅文, 清水 克哉, 久米 徹二, 佐々木 重雄
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] フェロペリクレイスのフォノン軟化2015
Author(s)
福井 宏之, BARON Alfred, 土屋 卓, 芳野 極, 小林 寿夫, 大石 泰生
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] Eu水素化物の高水素圧力誘起構造相転移2015
Author(s)
久野敬司, 松岡岳洋, 中河貴也, 藤久裕司, 平尾直久, 大石泰生, 依田芳卓, 三井隆也, 増田亮, 町田晃彦, 青木勝敏, 瀬戸誠, 清水克哉, 久米徹二, 佐々木重雄
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
-
-
[Presentation] PtHの高温高圧合成と電気抵抗測定2015
Author(s)
菱田 昌大, 松岡 岳洋, 久野 敬司, 中河 貴也, 平尾 直久, 大石 泰生, 清水 克哉, 高濱 和嗣, 久米 徹二, 佐々木 重雄
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] インジウムの圧力誘起構造相転移2015
Author(s)
高橋 一規, 杉本 隼之, 平尾 直久, 大石 泰生, 赤浜 裕一
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
[Presentation] 高水素圧力雰囲気下におけるEu水素化物のラマン散乱2015
Author(s)
久野 敬司, 松岡 岳洋, 中河 貴也, 藤久 裕司, 平尾 直久, 大石 泰生, 依田 芳卓, 三井 隆也, 増田 亮, 町田 晃彦, 青木 勝敏, 瀬戸 誠, 清水 克哉, 久米 徹二, 佐々木 重雄
Organizer
第56回高圧討論会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ(広島県広島市)
Year and Date
2015-11-10 – 2015-11-12
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 超高圧力を印加した硫化水素の構造と超伝導2015
Author(s)
清水克哉, 榮永茉利, 坂田雅文, M. I. Eremets, A. P. Drozdov, I. A. Troyan, 平尾直久, 大石泰生
Organizer
日本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-09-06 – 2015-09-19
-
-
-
[Presentation] H_2分子を内包する新奇リチウム水素化物の高温高圧合成と高圧物性2015
Author(s)
松岡岳洋, 久野敬司, 中河貴也, 平尾直久, 大石泰生, 坂田雅文, 太田健二, 中本有紀, 久米徹二, 佐々木重雄, 清水克哉
Organizer
日本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-09-06 – 2015-09-19
-
-
-
[Presentation] Eu水素化物の高水素圧力誘起構造相転移2015
Author(s)
久野敬司, 松岡岳洋, 中河貴也, 藤久裕司, 平尾直久, 大石泰生, 依田芳卓, 三井隆也, 増田亮, 町田晃彦, 青木勝敏, 瀬戸誠, 清水克哉, 久米徹二, 佐々木重雄
Organizer
日本物理学会2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学(大阪府吹田市)
Year and Date
2015-09-06 – 2015-09-19
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Lithium heated in high hydrogen pressure2015
Author(s)
Takahiro Matsuoka, Keiji Kuno, Takaya Nakagawa, Naohisa Hirao, Yasuo Ohishi, Kenji Ohta, Masafumi Sakata, Yuki Nakamoto, Katsuya Shimizu, Tetsuji Kume, Shigeo Sasaki
Organizer
Joint AIRAPT-25th & EHPRG-53rd International Conference on High Pressure Science and Technology
Place of Presentation
Madrid (Spain)
Year and Date
2015-08-30 – 2015-09-04
Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Presentation] Spin Transition in ε-Oxyge2015
Author(s)
Mari EINAGA, Katsuya SHIMIZU
Organizer
Joint AIRAPT-25th & EHPRG-53rd International Conference on High Pressure Science and Technology
Place of Presentation
Madrid (Spain)
Year and Date
2015-08-30 – 2015-09-04
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-