2015 Fiscal Year Annual Research Report
リピート結合分子をプローブとしたトリヌクレオチドリピート病の化学生物学研究
Project/Area Number |
26000007
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中谷 和彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (70237303)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堂野 主税 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (60420395)
村田 亜沙子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50557121)
中森 雅之 大阪大学, 医学研究科, 特任助教 (60630233)
|
Project Period (FY) |
2014 – 2015
|
Keywords | トリヌクレオチドリピート / 小分子 / プロープ / 伸長抑制 / RNA機能調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々の開発するトリヌクレオチドリピート結合分子を用いて、リピート伸長とリピートRNAの機能を低分子で調節する化学を拓き、トリヌクレオチドリピート病の新しい治療法開発に資する創薬リード化合物の創製を目指して、以下4つの研究項目、1)リピート結合分子の性能向上と創製、2)結合分子のリピート不安定化誘導と分子機構の解明・短縮分子探索、3)結合分子によるToxic RNAの捕捉、4)RAN Translationの分子機構解明と低分子による調節原理導出、を実施する。 平成27年度は、研究項目1) に関して、1-1)NCDの二量体であるNCTの細胞毒性軽減を目指し、NCTのナフチリジンをメトキシピリジンに置換した誘導体の合成を行った。1-2)、1-3)CTG、CUGリピートを標的とする、アミノピロロキノリン、および、アミノフェナンスロリン誘導体を種々合成しそれらの構造活性相関を調べた。1-4)リピートを標的とする新しいナフチリジン誘導体の合成、すなわち、環状二量体(CMBL)、三環性誘導体、アミノ酸修飾体など幅広い分子構造を有する分子群の合成を行った。研究項目2-1)では、これら合成リガンドのリピートDNA、RNAに対する結合選択性・親和性の評価を、昨年度確立した表面プラズモン共鳴法(SPR)により実施した。2-3)NAによるCAGリピート不安定化誘導では、昨年に引き続き細胞モデル並びにハンチントン病患者由来の細胞、さらにハンチントン病モデルマウスの線条体において調べ、リピート長が短縮される効果を再確認するとともに、論文発表データを精査した。2-4)ではd(CTG)nリピート短縮を誘導する分子の創製として、チオール基を有する分子の創製に取り組んだ。研究項目3)に関しては、3-1)化学合成で合成することが困難な長鎖のリピートRNA(CXGn, n>30)のSPRセンサーチップへの固定化を目指し、ライゲーションによる末端ビオチン化反応を検討した。また3-2)として、MBNL1タンパク質の大量調製法を確立した。3-3)筋強直性ジストロフィー(DM1)モデル細胞を用いて、前項で開発した結合分子のスプライシング異常軽減効果を検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、我々の有するNA, NCDを基盤として、塩基認識部位の水素結合形成、スタッキング能、空間配置などの異なる多様なリピート結合分子の合成を実施した。前年度までに確立しているDNAリピートに加え、長鎖RNAリピートへの結合を評価することのできる表面プラズモン共鳴法を構築するとともに、リガンドを用いたToxic RNAの機能阻害に関わるたんぱく質合成法も確立した。これらの解析手法を用いることにより、合成リガンドのより詳細かつ広範な評価が可能となった。前年度より行っているリピート短縮評価実験のほか、Toxic RNAが関わる筋強直性ジストロフィー(DM1)モデル細胞を用いた実験系も進展しており、概ね計画通りに進行していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1-1)CGGリピートへの高い結合親和性を示すNCTの細胞毒性低減を目指して、NCTの4つの2-アミノナフチリジンのうち、2つ、および全てを2-メトキシピリジンに置換した化合物を合成し、その細胞毒性を調べた。その結果、4置換体では、IC50が約4μMとなり、NCTのIC50である約0.1μMと比較して細胞毒性が大きく低減された。今後は、結合親和性、細胞内でのリピート伸長、短縮効果を調べる予定である。1-2, 3, 4)これまでの分子設計の幅を拡張して、多様な分子骨格を持つリガンドの合成を行った。塩基認識部位であるヘテロ芳香環の拡張、あるいは、二量化、四量化したリガンドは、リピートに対する親和性向上を示した。具体的には、アミノフェナンスロリンの二量体であるDDAPがCUGリピート、三環性のアミノナフチリジン誘導体がCCGリピートに対してそれぞれ結合することを見出している。また、認識部位を特定の配向に固定した環状二量体(CMBL)は、TGGやUGGリピートに対して独特な結合選択性を示すことを見出した。選択性についてはさらに向上させる必要があり、引き続き新しい分子骨格や協同的認識機構を取り入れたリガンドの創製を行う予定である。本項目で得たリガンドは、項目2)、3)の詳細な結合評価とおよび細胞を用いた評価を行い、さらに構造活性相関研究を進める。 3-1)化学合成により合成できるリピートRNAの長さは限られており、リピート病発症患者において見られる長鎖のリピートRNAとリピート結合分子のSPRによる結合評価を行うには、in vitro転写等で調製したRNAにビオチン修飾する必要がある。そこで、RNAの3'末端にビオチン化ウリジンーリン酸をRNAリガーゼにより結合させる手法を試みた。60塩基程度のヘアピンRNAに対するライゲーション反応の条件検討を行い、定量的にビオチン化ウリジンを結合させることに成功した。同様の条件で、r(CAG)50のビオチン修飾を行い、SPRセンサーチップへの固定化を行った。今後は、SPRセンサーチップに固定化した長鎖リピートRNAと結合分子との結合を定量的に評価するとともに、項目3-2)のtoxic RNAとMBNL1タンパク質との相互作用に対するリピート結合分子の阻害活性を定量的に評価する。3-2)Toxic RNAとのリピート結合分子の結合について、SPRセンサー上でのMBNL1との競合結合試験を行うために、MBNL1タンパク質の大量調製を検討した。共同研究先であるAdam Mickiewicz大学のSobczak教授より提供を受けたMBNL1タンパク質発現プラスミドを大腸菌に導入し、発現条件および精製条件の検討を行い、効率よくタンパク質を大量調製する条件を得た。大量調製したMBNL1タンパク質を用いて、toxic RNAとリピート結合分子の結合を評価する。3-3)本年度実施したリガンドの結合親和性評価実験から、DDAPが筋強直性ジストロフィー(DM1)に関連するToxic RNAであるr(CUG)nに強く結合することを見出した。さらに、r(CUG)800を導入したDM1モデル細胞を用いて、DDAPがスプライシング異常を軽減することを見出した。項目3-2)の実験等から、作用機序の解明を行うとともに、他のリガンドについてもモデル細胞を用いた評価を進める。
|
Research Products
(32 results)