2014 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドロゲナーゼと光合成の融合によるエネルギー変換サイクルの創成
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26000008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小江 誠司 九州大学, 工学研究院, 教授 (60290904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 高士 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10238321)
庄村 康人 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (50423900)
松本 崇弘 九州大学, 小分子エネルギーセンター, 准教授 (90570987)
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Project Period (FY) |
2014-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 太陽電池 / 合成化学 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の特筆すべき研究実績は、当研究室で独自に探索・単離したヒドロゲナーゼS-77をアノードに用いた酵素燃料電池の開発である。ヒドロゲナーゼS-77は、阿蘇山より採集した新規菌体シトロバクターS-77から単離した。このヒドロゲナーゼS-77は酸素や熱に耐性を持ち、これまで知られているヒドロゲナーゼよりも高活性かつ頑丈であり、固体高分子形燃料電池の作動条件でも十分にその機能を発揮することができる。アノードの半電池測定により単位重量あたりの水素酸化活性について調べると、ヒドロゲナーゼS-77は白金触媒よりも637倍高活性であった。このヒドロゲナーゼS-77をアノードとする酵素燃料電池は、従来の白金燃料電池に対して1.8倍の発電性能を示すことを見いだした。これらの酵素燃料電池の成果を、Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 8895とプレスリリース(平成26年6月4日、「燃料電池の白金電極を超える水素酵素「S-77」電極の開発に成功(白金の637倍の活性)」)によって公表した(NHK、RKB毎日放送、讀賣新聞、西日本新聞、日経新聞、毎日新聞、産経新聞、日刊工業新聞にて報道)。バイオと化学の融合により達成できた本酵素燃料電池について、JST newsの特集記事にて紹介された(2014年9月号、「天然酵素をまねて人工酵素を開発 : 自然界の力で優れた燃料電池の実用化を目指す」)。この特集記事により本研究成果を一般読者向けに発信することができた。さらに、ヒドロゲナーゼとそのモデル触媒についての集大成となる論文を発表した(Chem. Rec. 2014, 14, 397)。バイオ、基礎化学、応用化学の分野に携わる世界の研究者に向けて、総括的・包括的な本論文を発信することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、小江(研究代表者、研究の総括)、日比野教授(研究分担者、電気化学測定)、松本准教授(研究分担者、電極触媒調整)との共同研究により、酵素燃料電池の開発に成功した(Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 8895、「9. 研究実績の概要」に詳細を記載)。また、小江と松本准教授との共同研究により、多数の論文を発表した(Chem. Commun. 2014, 50, 13059、Chem. Commun. 2014, 50, 13385、J. Biosci. Bioeng. 2014, 118, 119、J. Biosci. Bioeng. 2014, 118, 386、Chem. Lett. 2014, 43, 1380、J. Organomet. Chem. DOI : 10.1016/j. jorganchem. 2014.09.025)。小江と庄村准教授(酵素の結晶化)との共同研究では、新規酵素の結晶化が順調に進んでいる。以上のように、研究代表者と研究分担者の専門知識・技術を相補的に連携することにより、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題「ヒドロゲナーゼと光合成の融合によるエネルギー変換サイクルの創成」を達成するために、本研究では、バイオを基礎とするテーマ(ヒドロゲナーゼと光合成)、モデル研究を基礎とするテーマ(ヒドロゲナーゼと光合成)、実用への橋渡しのテーマ(ヒドロゲナーゼと光合成)の3段階に分けて研究を推進している。 このエネルギー変換サイクルを構築するために、各テーマの個々の反応をアノード、アノードとカソードの連結部位、カソードの3つに分けている。具体的には、アノードは、水素を電子源とするヒドロゲナーゼ系(当研究室で新規に単離)と水を電子源とする光合成系(当研究室で新規に単離)の2つに分かれる。アノードとカソードの連結部位は、自然界の代謝系においては、解糖系とTCA回路に相当する。カソードは、酸素が電子受容体であるシトクロムcオキシダーゼを基礎とする。 平成26年度は、バイオを基礎とするテーマ(ヒドロゲナーゼと光合成)が順調に進んだので、今後は、モデル研究を基礎とするテーマ(ヒドロゲナーゼと光合成)と実用への橋渡しのテーマ(ヒドロゲナーゼと光合成)を展開していく。
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Research Products
(25 results)